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第12話
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「ねぇ、鬼ごっこは楽しかった?」
顔をあげなくてもわかる。
目の前に誰がいるのか。
「あの幼馴染の家にずっといるってGPSが教えてくれてたから迎えに行こうと思ってたら、彼の家にスマホを忘れてきただけなんだね?雨の中、傘もささずにいるなんてやっぱりあの男は君にひどい扱いをしてる。だから言っただろ?僕があいつを殺してやるって!」
男は興奮したように話し出した。
そういい男は懐から先が鋭く尖ったものを取り出した。
暗闇の中に輝くそれはナイフだとすぐにわかった。
「僕があんな奴から君を開放してあげる!」
そういい歩き出す男を見て今から一ノ瀬を殺しに行こうとしていることはすぐにわかった。
「だっ・・・ダメだ!」
白雪が声をあげると今まで笑っていた男から表情が無くなった。
「どうして止めるの?」
「そっ、それは・・・。」
なんて言葉を返すのがあたりなんだ。
もし自分が殺されたとしても彰人のことは絶対に殺させない。
そう思い顔をあげるといつの間にか男が目の前に立っていた。
白雪は恐怖で声を出すこともできなかった。
「もしかして、まだあいつのこと好きだとか言わないよね?」
男の言葉に白雪の肩が揺れた。
それを見た男は眉間にしわを寄せ白雪の肩を思いきり掴み揺らした。
「なんで!?あいつは君のことを自分のおもちゃだとしか見てない!僕は知ってるんだ、君が毎回悲しい表情をしているのを!あいつの言葉で陰で泣いていたことも!」
ずっと見ていたから知っている!そう男は興奮しながら言った。
「それでも、俺は・・・・。」
『なにか、困ったこととか助けて欲しい時はいつでも気軽に呼んでよ。僕は、朔夜が呼んでくれればいつでも助けに行くから』
「・・・・しゅ・・・う・・・・ちゃ・・・」
どうして急に元カレのことを思い出すんだ。
彼には罪悪感があった。
自分勝手な理由で彼、卯月柊とは別れた。
卯月といる時間は本当に幸せで。
いつも白雪のことを優先してくれ、些細なことでも気づいて心配してくれた。
卯月といると幼馴染の一ノ瀬のことを忘れていた。
そして、自分があんなに好きだった一ノ瀬のことを忘れていることが急に怖くなった。
恋人を作ろうとした理由が一ノ瀬を忘れることなんだから良かったではないか。
そう思っていたが白雪は怖くなった。
怖くなって彼の目の前から消えた。
それでも彼からは定期的に心配のメッセージが入っていた。
俺は、それすら無視をしているのに毎回返事なんて返ってこないってわかっているのに自分を心配したメッセージを送ってくれる優しい柊ちゃん。
『ちゃんと、ご飯食べてる?朔夜は、何かに没頭すると最初に食事を忘れてその次に睡眠。また、倒れちゃうからしっかり食事と睡眠取るんだよ?』『朔夜、困ったことがあったらいつでも頼っていいんだからね?』『朔夜、今日は冷えるからしっかり温かくして寝るんだよ?朔夜はすぐに風邪をひくんだから』
懐かしい。
「なに?今度は違う男の名前を呼ぶんだ・・・そうか・・・わかった・・・僕の物にならないなら・・・死んで永遠に僕の物になってよ。」
男はそういいナイフを白雪に向けて振り上げた。
あぁ、死ぬ前に柊ちゃんに謝りたかったな。
・・・死ぬ前に『朔夜』って呼んで欲しかったな・・・・。
死ぬ前に思い浮かぶ顔が幼馴染の彰人と元カレの柊。
『二頭追うもの一頭も得ず』
ははっ、欲張ったのが悪かったのかな・・・。
刺された場所が熱いなぁそう思っていると足に力が入らなく崩れ落ちた。
「白雪が僕のことを見ないから悪いんだ!」
そういいながら何度も白雪の体を刺す男に白雪は成すすべもなく暗闇へと意識を手放した。
周りからは悲鳴やサイレンの音が響き渡った。
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