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第15話
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白雪の病室の前に着くとあの血だまりがよぎり手が震えてなかなか扉を開けることが出来なかった。
「・・・朔夜は大丈夫だ。」
何度目かわからないが自分に言い聞かせ一ノ瀬はやっと震える手で扉を開けることが出来た。
部屋に入ると機械音が鳴っていた。
ゆっくりとベットの方へ足を進めるとそこには最後に会った日よりも青白く、死んでいるのかと心配になるほどの顔色だった。
機械音から白雪の鼓動を教えてくれているが自分で確認しないと信じられなかった。
もし、鼓動が止まっていたら?
そんな心配をしながらゆっくりと白雪の胸に手を伸ばした。
するとゆっくりではあるが『とくん、とくん』と白雪が生きていると鼓動が一ノ瀬に教えてくれた。
「悪かった・・・俺があの時、すぐに朔夜のことを追いかけていれば朔夜はこんな目に合わなかったかもしれないのに・・・あの時、血だまりを見て嫌な予感したくせにそのまま素通りしてごめん。もっと早く、ストーカーのこと気づいてやれなくて・・・ごめん・・・お前の・・・気持ちを気持ち悪いって・・・ごめ・・・・・・。」
泣きたいのは白雪の方なのに一ノ瀬は涙を流した。
謝ることは山ほどある。
こうしていれば、もし、もし、もし。
そんなことを今更考えたって、後悔したって遅いことはわかっているのに考えずにはいられなかった。
「朔夜が俺のことを好きだとわかった時、朔夜は俺の物だと思った。好きなら何をしてもいいだろって」
そんなことないのに。
あの時の自分に腹が立ってしょうがない。
「自分にしか見せてくれない表情が嬉しかった。他の奴には見せない表情を俺には見せてくれるんだって優越感。もっと見たいと思った。」
一ノ瀬は白雪の手を優しく握った。
「朔夜の笑顔は自分だけのものだと思ってた。だけど、お前の誕生日の日。今年も一緒に祝おうと思って連絡したら『恋人ができた』ってきて衝撃を受けた。」
朔夜に恋人ができたということも衝撃だったが、自分よりそいつを優先させるということが信じられなかった。
「今思えば当たり前のことなんだけどな・・・あの時の俺は、朔夜は俺の物だって勝手に思ってた。朔夜は何があっても俺の元を離れないと。」
そんなわけないのに
「どんな奴か見てみたくなった。俺より優先させるほどの人間はどんな奴なのか。もしかすると俺を忘れるためにいやいやそいつと付き合っているのではないかと。」
一ノ瀬は眉を下げて白雪を見た。
「そんなことなかった。お前は本当に楽しそうに笑ってた。」
その時、俺の朔夜に見合わない。そういう理由で白雪の知らないところでそいつをしめて別れるようにした。
「カッとなってお前を傷つける言葉を言ったことを忘れて」
これで誰も白雪に近づく者はいなくなるだろう。そう思っていたのに白雪はまた、新たな恋人を作った。
「一番、堪えたのは卯月柊。あいつと一緒にいるお前は今まで付き合ってきた奴らと全く違った・・・本当に幸せそうで。俺のこと好きだって言ったくせに俺のことを忘れて他の奴と幸せになるなんて許せなかった。」
ほんと、子供だよな・・・。
「だから、こいつにもくぎを刺しに行った。『白雪朔夜は俺の物だから近づくな』今までの男どもはそういうだけでしっぽを巻いて逃げていった。そんな奴ら、朔夜にはつりあわねぇって勝手に評価つけて、でもあいつは違った。」
「なるほどね。君が今まで朔夜の恋路を邪魔してたのか。」
卯月は一ノ瀬を見ると哀れんだ目で見てきた。
「自分の心にもっと正直になればいいのに」
「何のことだよ。」
一ノ瀬が怪訝そうに卯月を見るとくすりと笑った。
「いいことを教えてあげるよ。君のそれは嫉妬だ。好きな子を取られて嫉妬してるんだよ。だから、自分以外の男といると腹が立って仕方がない。」
一ノ瀬はその言葉に鼻で笑った。
そんなわけないと。
それを見て卯月は困ったように笑い言った。
「まぁ、僕的にはそのことに気が付かないで欲しいからこれ以上は何も言わないよ。」
「僕は本気で朔夜のことが好きだからね。」
そういい去っていく卯月の後姿に一ノ瀬は不安になった。
このまま本当に白雪が自分の手が届かないところに行ってしまいそうで怖かった。
「だけど、あいつほんと手ごわくて、俺が何をしてもふてぶてしく笑うんだ。『そんなことしても僕は朔夜と別れないよ』って」
その時、自分がどうしてここまで必死になっているのかわからなかった。
でもある日、俺のもとに朗報が入った。
「そういえば、彰人の幼馴染別れたらしいよ」
それを聞いて俺は嬉しかった。
やっと自分のもとに帰ってくると。
だけど現実はそううまくいくわけもなく。
「そんなことを裏で続けてたある日、朔夜、お前が消えたんだ。」
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