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第21話
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病院で数日入院し今日はやっと白雪の退院日だ。
「忘れ物は?」
一ノ瀬の言葉に白雪は首を振った。
「やっと帰れるー!」
白雪は嬉しそうに笑い一ノ瀬の方を見た。
「そうだな」
一ノ瀬はずっと聞けなかった。
『どうして倒れたときに俺じゃなくて卯月にかけようとしたんだよ。』
これを聞いてしまったら白雪が自分の元から消えてしまうそんな気がして聞けずにいたのだ。
退院後はすぐにいつも通りの生活を送っていた。
だが、どうしていつも食事をしていたはずの白雪が栄養失調で倒れてしまったのか不思議でしょうがなかった。
それからずっと白雪の様子を伺っているという名の監視をしているとあることに気が付いた。
こうやってご飯を食べた後、必ず白雪はトイレに行く。
何も不思議なことではないと言われてしまえばそうなんだが、何故か気になった。
だから、今日はこっそりと白雪の後をついていった。
するとトイレから苦しそうな白雪の声が聞こえてきた。
『もしかして吐いてる?』
一ノ瀬がドアをノックすると「ひっ・・!」っと短い悲鳴が聞こえた。
「朔夜、ドアを開けてくれないか?」
一ノ瀬は優しく白雪に問いかけた。
少し時間が経った後にドアがゆっくりと開いた。
出てきた白雪の顔はどこか疲弊していた。
「俺の勘違いだったら否定してくれ。結構前から食事がとれてないのか?」
一ノ瀬の言葉に白雪は何も答えなかったがびくりと肩を揺らしたのを一ノ瀬は見過ごさなかった。
「朔夜?」
一ノ瀬が白雪の名前を呼ぶとぼそぼそと白雪は話し出した。
そして、白雪は涙を流しながら謝り続けた。
せっかく作ってくれたものを無駄にしてごめんなさい。
迷惑かけてごめんなさい。
めんどくさいやつでごめんなさい。
もう迷惑かけないからだから俺のことー・・・
『捨てないで』その言葉は一ノ瀬によって発することが出来なかった。
一ノ瀬は白雪のことを優しく抱きしめたのだ。
「大丈夫、大丈夫だから」
そう何度も何度も白雪に伝えたのだった。
ああ、あとどれくらいこの幸せな空間に居られるだろうか。
あとどれくらい彰人と一緒に居られる?
あとどれだけ記憶を失ったふりをすればいい?
もう、疲れた。
いつか消えてしまう幸せに怯えるのも。
幼馴染の彰人のことを好きでい続けることにも。
もう、疲れたんだ。
白雪はゆっくりと目を閉じたのだった。
明日、出ていこう。
もう、ここにはいられない。
いたくない。
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