アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
ラムネ雪3
-
「大学に行ってたときは持ってたけど、今は持ってない。必要ないと思って解約した…」
その後、瞳の奥にまた別の動揺を見せる。
拒絶されたと思ったのだろう。
「…」
なんと言って良いのかわからないような言葉を探しているナツキに雪がいう。
「母には、持ってろって言われたけど。頻繁に連絡するようなこともないし…」
雪の母親は、雪と違ってかなり流行のものへの飛びつきが早い人で、SNSやらアプリやら、雪が帰省するたびに横文字のよくわからない単語を使い、マシンガンのように話すので、正直ついていけない。
「…マジで?」
ナツキは、どこかホッと胸を撫で下ろすかのように息と言葉を吐き出した。
「ああ…固定電話なら教えるけど」
「…」
ナツキは、返答に苦しんでいるようだった。
「パソコンとかもないの?メールも?」
「共有のものが1台あるけど、俺はあまり触らない」
「…」
今度は、不憫なものを見るような目になる。
感情が透けているようで面白い。
「じゃあ、テレビはあるの?」
「それはどこにでも普通あるだろ」
滅多に見ないけど…
「…ゆきちゃんもしかして、何かあった?」
「は?」
ナツキは怪訝に雪を見ていた。
「例えば、浮気相手に刺されそうになったとか。たちの悪いファンがいっぱいいるとか…」
「何それ?どういうこと??」
雪には訳がわからなかった。
ナツキの質問の意図が読めない。
「だってそのくらいじゃないと、今時携帯を持ってない意味がわかんない…」
必要ないと断言する理由も…
ナツキは、誰でもスマートフォンを持っているこの時代に、必要ないという人間が目の前にいるのが信じられないと言った様子だった。
便利が省略されていき、電話の機能だけに止まらず、カメラ、財布、定期など様々な便利な機能が付いている。
連絡も電話、メールだけではない。
便利な機能が沢山ある。
それの一切合切を必要ないという事は、それをせざるを得ないとても大きな事情があるのではないだろうかとナツキは勘繰っていた。
例えば、女関係とか、ヤクザとか…
それで、俗世から隔離されるような場所に行くことで、自らの過去を生産しているのではないかとも考えつく。
「そう?」
特に気にしていない雪に、ナツキは呆れている様子だった。
「…変わってるって言われたことない?」
「あるけど、別に…」
雪は首を傾げた。
人と変わったところなんて、誰にでも1つくらいはあるだろうと思う。
それを世間では個性というのだが、大方世間からは外れた不明瞭なものについて使われる言葉だと雪は思う。
それを言い方が代わると『変わってる』というだけだから、誰だって人生で一度は言われたことくらいはあるだろう。逆にそれがない人はいないのではないだろうかと思う。
だから、雪は特に気にしたことはない。
「…わかった。じゃあ、それで良いから連絡先教えて」
「うん」
ナツキは何かを諦めたかのようでもあった。
雪がナツキに口頭で住所を教えようとしたその時だった。
「あら?雪…そんなところで何やってるの?」
玄関の扉が突然開いて、母親が出てくる。
小綺麗な格好をしていて、カバンを持っていた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
3 / 20