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傷
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ほんの数日入院しただけで美郷の体は綺麗に傷がなくなっていた
いくら治癒能力が低くなっているといっても、やはりそれは人間の何倍も早く傷を無くしていく
久しぶりに美郷と一緒に屋敷へ帰る
もちろん俺は病院に泊まるわけにはいかないから毎日屋敷へ帰ってきていたけど、美郷と一緒に屋敷に居られるのが久しぶりすぎて今までの何倍も自分の屋敷が輝いて見えた
だけど、俺はまだ美郷に言わなくてはいけないことが残っている
美郷の苦しむ姿に欲情してしまうこと
これは、パートナーとして必ず伝えておかなくてはいけないことだと思っている
だから、言いたい、のだけれど
本当に今更すぎるのだが、美郷に嫌われるのが怖い
とっくの昔に彼には嫌われていると思っている
美郷は俺のことを好きだといってくれたが、正直俺が思うに彼はまだ"好き"という感情を知らない
だって、そりゃそうだろう
ずっとこの屋敷に閉じ込めて生活させてきた
だから、いくら好きだと言われても信用はしていないし、これ以上嫌われないように俺は精一杯なのだ
そうやって葛藤し、言えないまま数日が経った
そして、その時は突然やって来てしまう
『ケホッケホッ!』
「美郷・・・?」
俺たちは寄り添ってテレビを見ていただけなのだが、水を飲んだ際に誤飲したのか美郷がむせたのだ
ただそれだけならよかった
だけど、俺は感じてしまった
俺の体の奥底から湧き上がってくる抑えられない衝動を
(苦しめたい。もっと苦しんで欲しい・・・!!)
ダメだと分かっていた。必死に腕を押さえて心を抑える
だけど次第に欲に勝てなくなるほど欲が溜まっていく
『鷹さん・・・?』
気づいたら俺は、美郷の首を思いっきり締めていた
『ガッ・・・!あ、ゃ、鷹・・・さん・・・!!はぁッ・・・!ぁ!』
腕の中で暴れる美郷をみてどうしようもなく欲情している自分がいた
目に涙を溜めてこちらをみている美郷がどうしても美しく感じてしまったのだ
(もっと・・・!!)
自分でも信じられないくらいに自分の制御が効かなくて、
首を締めたまま何度も何度も美郷を殴っていた
殴り過ぎたのか、自分の拳から血が流れているのに気づき、ようやく我に返る
目の前に血を流しながら苦しそうに息をし、倒れ込んでいる美郷がいて、なにが起こったのか自分でも理解出来ず、俺はただ呆然と立ち尽くした
首を絞められた瞬間、なにが起こったのか全く分からなかった
ただ苦しくて、やめて欲しくて鷹さんの腕を掴む
でも僕の力じゃぴくりともしなかった
涙で視界が歪んで、酸素不足で視界が白くなって、僕の目はもはやなにも捉えてなかった
「もっと・・・・・・!」
鷹さんの口からそう聞こえると首を締めていた手が離れていく
『か、ひゅっ!はぁっ・・・はッ・・・!!』
必死に息をしていると今度は離れた拳がおもいっきり顔に降りかかってくる
『いっっ!!』
唇が切れたのか、口の中に血の味が広がる
しかし鷹さんの手は止まることを知らなかった
これが僕のことを大切にすると言ってくれた鷹さんだと信じられなくて鷹さんの目を見つめると、その目は光を失い、全てを吸い込んでしまいそうな真っ黒に染まっていた
だから、僕は鷹さんは今正気ではないのだと理解した
それからは耐えるしかなかった
何度も何度も拳が降り注ぎ、あちらこちらの肌が切れ、血が飛び散る
それでもしばらく続いた
そして、鷹さんの拳が急に止まった
鷹さんが驚いたように立ち上がり、後ずさる
どうやら正気に戻ったようだった
だけど、そこから動かない
鷹さんが今自分がやったことを理解出来ていないのがはっきりと分かった
痛いのも、苦しいのも、もう嫌だ
だけど、また捨てられるのはそれ以上に嫌だった
やっと得られた安寧の時を手放したくはない
あの時、好きだと言われたけれど正直僕自身は鷹さんに好きだと思ったことはなかった
"好き"は知っている
俺が置かれている部屋に無造作に転がっていた本に小さな頃から教えられていたから
だけど、僕はこれまで1度も"好き"を感じたことがない
それよりもこの世界は恐怖で溢れていた
今はどうやってその恐怖から逃げるかが大事なんだ
その為にはどうにかして鷹さんに捨てられないようにしなければいけない
だから、僕は言ったのだ、僕も好きだと
僕が今、鷹さんに嫌われないようにする為にするべきことは、彼を許すこと
だから僕は必死に呼吸を整えて、ふらつく足で立ち上がり、何も言わずに鷹さんを抱きしめた
「ごめん、ごめんな・・・。ごめん、ごめん・・・。」
頭上から鷹さんの震えた声が降ってきて、故意ではなかったことが確信に変わった
震える手が頭に添えられ、体を引き寄せられ、強く抱きしめられる
僕はされるがまま抱きしめられていたが、そのうち力が抜けて気を失った
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