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Crystal-1
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別に何も変わらない日だった。いつものように疲れて、食べて、風呂に入って、そして寝る。ただそれだけ。それを毎日毎日、繰り返す。機械のような日々。その中の一日だった。
「あれ?」
変わらない、はずだった。
真っ白な世界。何も無い、白いだけの世界。こんな所、気が狂うかもしれない。夢にしても悪趣味すぎる。
そんな中で膝を抱えて座り込み、眠っている人を発見した。それは高校生くらいの、まだ幼い子供に見える少年だった。
だが、その少年は一目で「人間じゃない」と分かる見た目をしていた。この世の者とは思えないほど美しい。まるで、ルネサンス期に作られた彫刻達のように。そして背中には、彼に似合う真っ白な翼が生えていた。
瞼がゆっくりと動く。白い肌に隠された、宝石のごとく透き通った瞳が姿を現した。
「リュウ。」
少年が目を覚まし、隣に居た私を見て、名前の一部を呼んだ。驚いた私は彼から逃げるように距離を取った。少年はこんな失礼な事をした私に気分を害した様子も、驚く事も無く、人形のように無感情な目で私を見ているだけだった。
「は、初めて会ったはず、だよな?」
「初めてじゃない。でも、どっちでも構わない。」
淡々と話す、たった一人しかいない少年。こんな所に一人でいるせいで、ちょっと色々おかしいのだろうか。本当に不思議な夢だ。そう思いながら、私は距離を取ったまま少年に聞いてみることにした。
「君は、何者なんだ?」
「わたしは死神と呼ばれるもの。」
――死神。あの世の遣い、人の死を誘発するもの。私にはそんな物騒なモノにはとても思えなかった。どこまでも白くて、ゾッとするほど純粋で美しいモノが。
「どちらかと言えば、天使に見えるんだが。」
「同じ事。天使とも呼ばれたし、あの世の遣い、神の使徒、地獄の門番、悪魔とも呼ばれている。」
少年の言う事は滅茶苦茶だった。何をどうしたら、天使と悪魔が一緒に分類されるのだろう。それに、この真っ白な翼が悪魔のそれと同じには思えない。全く理解出来なかった。
理解するのはもうやめよう。言っている意味が分からなさすぎて混乱してくる。だから、私は彼の「名前」を聞く事にした。
「名前は?」
「無い。」
「どうして?」
「そういうものだから。」
無感情に、機械的に答える少年は、名前が無い事に何の疑問も持っていなかった。それが当たり前だとでも言うように。
動物に名付けるのはよくある事だ。動物とは言葉が通じないから、こっちから一方的に名付けるしかないからだ。でも、人間のように見える彼に名付けるのは気が引けた。
「でも、私が君を呼ぶのに困る。」
「では、勝手に呼べばいい。皆、そうだった。」
「皆?」
ここには少年一人しかいない。皆とは誰を指すのだろうと首を傾げると、少年は手をゆっくりと動かした。
首に。腕に。指に。足に。沢山身に着けている、美しい宝飾品の数々に触れながら、彼は言った。
「これらは皆の枷だったもの。首飾り、腕輪、指輪も。皆がここを出る時にわたしへくれた。」
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