アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
Topaze-1
-
人の気配に目を覚ます。またきっと、リュウイチが来た。だが、目を覚ましたのに誰も見当たらない。ただ真っ白な世界が広がるだけ。
――――誰もいないのに、わたしは目覚めたりしない。考える事も無駄なその時間を過ごしたくない。
仕方なく、枷の伸びる範囲まで足を延ばしてリュウを探す事にした。この世界に居る事は確実だ。わたしを通らず、「その先」に行く事は出来ないはずだから。
久し振りに足を動かす。人間に限りなく近い存在として創られた自分の足が、世界を踏みしめていく。立っている感覚というものが久し振りで、吹くはずもない風を感じる。悪くない。
「どこにも、いない?」
人の気配がしたのは確かだった。なのに、世界はただ真白。何の色も映しはしない。世界の、何処にも。リュウの「色」は無い。
「そんなはずは、」
「あら、ブラン?まだこんな所にいたの?」
有り得ない声がして、振り返った。少女がいる。ここに来ることが可能である人間はリュウだけであるというのに。相変わらず、わたしを以前の名前で呼ぶ少女が。
「何故、ここにいる?四番目は、トパーズはどうした。」
「そんな顔も出来たのね、あなた。初めて見たわ!」
「私が逃すとでも思うのかい?久し振りだな、七番目。」
枷を外した仲間は、「人間」になる。堕ちた存在は、二度と此方に戻れない。そのはずだった。現に、わたしの目の前にいる四番目は、かつてのような「橙色」では無かった。人間の色。姿は同じでも、「色」が人間だ。
「どうして、何故戻れた?」
「さあ?私にも分からないよ。」
「オランジュに分からないなら、私にも分からないわ。」
くすくすと暢気に笑い合う二人を見て、グッと何かが込み上げて来た。
何故わたしはここにいる?
何故、わたしだけが枷を外せないの?
誰の為に、わたしはここにいるの?
「変わったね、七番目。」
「は?」
「昔より、ずっといい。一番目や二番目が見たら喜ぶよ。」
「ふ、ざけてるのか。」
わたしが出した声は、思っているより震えている。胸が熱い。頭が焼け付くようだ。
四番目はわたしをジッと見た。そして首を横に振り、昔のように笑った。
「ふざけている、なんて。昔の君には分からなかっただろうにね。」
「ッ」
――言葉に詰まった。確かに、人間のどうこうなんて。わたしには分からない。分かるはずがないものだった。
人間に、なりたくない。人間になったなら、どうなる?
「ねえ、「人間らしくなった」七番目。少しお話をしようか。」
とても楽しい話になるだろう。
四番目の言葉に、わたしは口に出す事無く否定した。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
7 / 7