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Citrine-2
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「誰の話が聞きたい?」
聞いてみたが、リュウは「はあ?」と声を上げた。何か妙な事でも言ったかと考えてみたが分からない。
「君の仲間を知らないから聞いているんだろう、誰と言われても分かる訳がない。」
「ああ、リュウに会ったのは「六番目」が落ちた後だったか。知らないのは当然だな。」
ここには滅多に人間が来ない。人間が来ない時は、わたし達は仲間と語ることもない。仲間が語り、何かをしようと思うのは「落ちる」前だけだ。その時だけ、わたしは時間を知った。長いようで短い時間を。
「六番目?」
「わたしが生み出された時、仲間が六体いた。気まぐれのように生み出されるので、気付けば数が増えたり減ったりする。」
「どうやって生まれるんだ?」
「わたし達と結びついた人間がいる。その人間が生まれると同時に生み出される。」
よほどわたしの仲間に興味を持ったのか、彼はわたし達についてよく聞こうとする。聞きたいと思うのであれば、答えてやりたいと思った。彼と話す事は、昔から煩わしいと思った事が無いのだから。
「私と結びついたのが、君?」
「いや。わたしは別の人間と結びついて生まれた。その人間の魂を運び終わると、また別の人間と結びつく。ゆえに死神と呼ばれる。」
「運ぶって……あの世?」
「恐らく。その先の事は、わたしも知らない。」
人間とは、自分とは明らかに違うものを忌み嫌うと言う。いつだったか、四番目と共に去った少女が言っていた。わたし達が綺麗すぎて怖いと。
子供とは考える事なく思いのままを口にする。その子供は熱心に悪魔や死神といった「忌み嫌う者」と、それらから人間を救う「忠義者」の物語をよく聞かされていたらしい。
人間の考え方で言う「勧善懲悪」というものを題材とした物語は、幼い子供が読むものに加えられているのか種類が多い。少女は「こんなのも知らないの!?」とわたしに毎度のごとく読み聞かせていたものだ。
「だから、わたしは死神だと言った。魂を運ぶものだから。」
リュウは少し黙って、それから首を振った。呆れたと言うべきか、諦めたと言うべきか。よく分からない表情をしている。しかし、納得は出来ない物らしい。わたしには天使も悪魔も死神も同じものだと言うのに、人間は区別したがる。そう思うのは人間だけだ。
「私の名前を知っているのは、それが理由?死神だから?」
「いや。昔、リュウが名乗った。だからわたしは「リュウ」という名前である事しか知らない。」
「龍と呼ばれてたのは結構昔の話だぞ……。」
人間でないからと、人間が抱く理想のような「全知全能の存在」ではない。何もかも知っている訳では無い上に、出来ない事も存在する。実際にわたしは「飛べない」。
わたし達はただ、人間ではないというだけの存在なのだ。
「つまり昔、同じ夢を見ていたって事か?」
リュウは、わたしを――この世界を、夢だと思っているのか。少し、胸の辺りが苦しくなった。これは、六番目が落ちた後に似ている。
わたしは「存在するもの」だ。夢幻の類ではない。だが、あることを思えば隠す方が良いような気がした。
「そう、だな。リュウは、幼い頃にわたしと会う「夢」を見た。」
「そこで私が名乗ったんだな。」
「そういうことだ」
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