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甘い休日 1-5
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偶然サロンで再会したとき、内心激しく動揺しながらも、態度にはそれほど表れていなかったように思う。ようやく施術が終わってほっとする蒲生に、希は少しの躊躇いもなく頭を下げた。自分の言動を心から悔い、助けてくれてありがとうと告げる希に、蒲生はうろたえ、逃げるようにその場から立ち去った。
なぜ自分がこれほど動揺しているのかわからなかった。ずば抜けて器量が良いわけでもなく(悪いとは言っていない)、そこらへんにいくらでもいそうなごく普通の男の何が自分の調子を狂わせるのか。突き詰めて考えたら決定的な何かが変わってしまいそうで、蒲生は恐れ、そして逃げた。
これ以上こいつに関わらなければいい。
普段と変わらない日常が戻ってきたことに安堵して、そのくせ自分が何かとてつもない大きなミスをしてしまったような不安にかられた。
希が再び蒲生のサロンに訪れたのはそんなときだった。これまでの態度を真摯に詫びる希の顔には、もう二度と蒲生には関わらないという清々しいほどの決意が滲んでいた。
これを逃したらもう二度と会えない。もう一度偶然が訪れることなんてないーー。
とっさに後を追いかけ、その手を掴んだのはほぼ無意識の行動だった。呆気にとられたような希の顔から、照れくさそうな笑顔が零れたとき、蒲生の中でこれまで固まっていたものがほろりと崩れ落ち、あたたかな何かに包み込まれるのを感じた。蒲生は、ようやく自分が間違っていなかったことに気がつき、安堵した。
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