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甘い休日 1-8
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つい思ってもいない憎まれ口をたたいてしまい、しまったと思ってももう遅い。蒲生はふいっと顔を背けると、気まずげに席を立った。
「蒲生……ーー奎吾」
背後から躊躇うような恋人の声が聞こえ、蒲生の胸は震えた。
希の手がそっと蒲生の髪に触れ、愛おしむようにやさしく撫でる。
「お前ってさ、ときどき子どもみたいになるのな」
照れくさそうに、その瞳がやわらかく笑みのかたちをつくるのを、蒲生は呼吸を詰め、胸が締め付けられるような思いでじっと眺める。髪を撫でていた希の手を掴み、自分のほうに引き寄せると、希がはっと呼吸を飲むのがわかった。
「ーー子どもみたいな俺は嫌か?」
ようやく発することができた言葉は自分でも嫌になるほど不安げで、希が驚いたように目を見開く。次の瞬間、花がほころぶように恋人の口から笑みが零れた。
「ばーか。嫌なわけあるかよ」
胸がぎゅっと苦しくなる。悲しいことなど何ひとつないのに、わけもなく泣きたいような気持ちになった。蒲生は希の後頭部に手を添えると、その唇にキスをした。
「……奎吾」
蒲生と同じものを期待するように、希の瞳が色っぽく潤む。蒲生は恋人の身体を抱き上げると、寝室へと向かった。
その後、蒲生の予想した通り、明は兄の許可を得て、恋人との旅行に出かけたらしい。「これ、お前に土産だってさ」と首を傾げた希から手渡されたものは今時どこに売っているのかと疑問に思うような時代遅れの木彫りのキーホルダーで、これは新手の嫌がらせか何かだろうかと蒲生は頭を悩ませた。
END
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