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研究所
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研究所での暮らしは、見るもの全てが初めてのものばかりで、新鮮だった。
ボクを買ってくれた男の人は、周りの人達からラディーと呼ばれていた。
本当の名前は聞いたことがなかったけれど、ラディーと呼べば彼は返事をしてくれる。
ボクは、それが嬉しくてたまらなかった。
研究所に来てしばらくの間は、規則正しくご飯を食べて、血を採ったり、体重を量ったり、そんな生活だった。
手じゃなくて、スプーンやフォークを使ってご飯を食べる方法も教わった。
少しすると、ボクは今までよりずっと色んな事が考えられるようになった。
今までは栄養失調という状態だったんだと、ラディーが教えてくれた。
「あまり栄養が行き渡っても、その細い身体のラインが維持できなくなりますし、 そろそろ合成に入りましょう」
ラディーがいつものようにふんわりと眼鏡の奥で微笑む。
「うんっ」
ラディーが口にする言葉は、いつも聞いたことのない単語がイッパイでよく分からなかったけれど、ボクが大人しく言う事を聞けば、彼が喜んでくれるという事だけは分かっていた。
「ねえ、ラディーはどうしてボクにこんなに優しくしてくれるの?」
ボクの質問に、部屋を去ろうとしていたラディーが振り返って答える。
「私はね。君のような可愛い男の子が大好きなんですよ。 君が、限界まで追い詰められて、縋り付く様を見たいのです」
「ふーん……?」
やっぱり、よくわからないけれど、ラディーは、ボクの事が大好きって言ったのかな……?
「難しかったでしょうか?」
ラディーが苦笑する。
「え、ええと、よく分かんないけど、ボク、頑張る!!」
ラディーが喜んでくれるなら、何でもしたい。
ボクは少しでも彼の力になりたいと、心の底から願っていた。
「ええ、頑張ってくださいね。合成の後はしばらく辛いでしょうが、私も時々様子を見に来ます」
「うんっ!」
「それに……、合成後には、私の言った事が嫌でも分かりますよ」
「うん?」
なんだろう。
嫌っていうのは良くない言葉だよね……?
「私が、その身体に直接教えてあげましょうね」
ラディーがボクをじっと見つめて微笑んだ。
その表情が、なんだかすごく楽しそうだったので
ボクもつられて微笑み返した。
ボクが、別の生き物と合成されたのは、それから一週間後の事だった。
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