アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
13
-
クロムは言葉に詰まり、恐る恐る視線だけでヴィルフィーラを見た。顔を見れば秘密がバレそうだった。
「オイ」
「……ん?」
とりあえず、しらばっくれる作戦でクロムは寒そうに背中の毛布を頭まで被って誤魔化した。
ヴィルフィーラから大きなため息が聞こえ、クロム膝を抱いて顔を埋めた。
「……お前、祝えるって言ってたろ?何、さっきの」
「ん?」
「はぁ……」
明らかにがっかりしたような大きなため息が隣で聞こえ、クロムは息を止めた。
好きでいてもいい。クラウスも同じ気持ち。
それをヴィルフィーラに伝えたい。
だが、クロムは『内緒』という約束に口を閉ざした。
「……大変だぞ。色々な。俺はどうするべき?知らん顔で見てりゃいいの?」
クロムが言葉に迷っていると、ヴィルフィーラは続けた。
「最悪、お姫様にバレたらお前どうなるの?よくねぇだろ……心配になるわ」
「ごめん……」
「久々に会ったら、気持ちが爆発しちゃうのも分かるけどさ。……次期王様だろ?せめて王様になるまで待てば。王様になったら、何とでも誤魔化せるんじゃねぇの?」
ヴィルフィーラは毛布を越しにクロムの肩を抱き寄せた。頭がぶつかるが、柔らかな毛布が痛みを感じさせることはない。
学徒の頃から、ずっと変わらないお互いの慰め方に、クロムは唇を噛んだ。
自分の事をどうにか考えてくれる親友に、嘘を吐くのが辛かった。
「クラウス様のためにクロムが泣くの、俺はイヤだなあ……みんな幸せならいいのに」
ヴィルフィーラは小さく呟いた。
クロムは被っていた毛布からズルズルと頭を出し、隣の親友を見つめた。
「どうしても……好きなんだ」
「だろうな」
「久々にあったら、優しくて、好きって匂いがする……」
「匂いか。俺ら獣人だもんな。好きな人の匂いは忘れられねぇわな」
「それにクラウスはやっぱりカッコイイ」
「そうかあ?ファーデル国の人はみんな白くて細めで綺麗な感じじゃね?よくあれで雪の中、生きてるよ」
「そこがカッコイイんじゃん!しゅっとしててふわっ!って感じ」
「分かんねえ〜」
ヴィルフィーラはけらけらと笑い、クロムも微かに笑顔が戻る。
親友を見守ることしか出来ないヴィルフィーラは、少しでも明るい、いつもの様子を望むように接することを決めた。ひとの気持ちを変えることなど、容易ではない。それが、悲しみを伴うなら尚更だ。
ふたりの身体が温まり出した頃、夕食が運ばれて来た。
食事と一緒に第二王子のダインが部屋を訪れ、ヴィルフィーラと飛行について話が少し盛り上がりを見せた。
普段控えめなダインの好奇心にクロムは笑った。
ダターラの姫、エリーゼからも感謝の言葉を家来から受け、明日の結婚式の後に直にお礼をしたいと伝えられた。
迫る明日に緊張しながらも、美味しい食事と温かい湯に浸かり、ひと息をついたふたりは、それぞれの部屋へ休みに戻る。
「ヴィル。おやすみ。……ありがと」
「おやすみ。お互い様な」
部屋に入ると、廊下を照らしていたランタンよりも雪に反射する月明かりが、部屋を明るく見せた。
「雪の中、泳げたらなぁ……」
クロムの呟きが一瞬窓を曇らせた。
数分ほどだろうか。一面の雪原と晴れた夜空を見ていたクロムが、就寝のためにそっとカーテンを引いた時、小さなノックが2度鳴った。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
13 / 19