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もうどうなっても知らんわ
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「どうしたんだよ」と潤さんは言うけど。
「なんや、どうしてええかわからんのです。」なんて、言えへん。言えるわけないやろ。
一方で理性ぶっ飛ばしそうやしそうしたい自分がおって、一方で潤さんに優しくしたい自分がおって。胸がぐるぐるする。動きが止まってしまう。
「あんたさぁ、俺のこと、相当好きだろ。」と、潤さんが言う。
「どうしたっていいんだぜ?」と、手慣れた様子で誘うけど、なあ。俺、童貞やねん。
「ああもう、潤さん、好きです。」と言って、俺は潤さんの上にのしかかる。ほぼ、やけくそや。どうしていいかわからんくて潤さんに抱きついてみた。
「…俺のどこがそんなに好きなんだ?」
潤さんが訊く。
「やっぱ、見た目か?」
「…なんでわかるんですか。」
「そういうやつ、多いから。で、俺の中身知ると、たいていいなくなる。」
「俺は潤さんがどんな中身でも、離れません。好きです。」
思わず、口走ってた。その言葉は、まるで放たれる時を待ってたみたいに、するすると口から放たれてった。
「…嘘だ。」潤さんは、俺を抱きしめて、耳元で囁くように言った。
「でも、そう言ってくれるの、すっごく青臭い感じがして、嫌いじゃないな。」
俺は、答えずに、潤さんに抱きついてる腕に力を込めた。
もう、体当たりで分かってもらうしかないなと思うねん。
服を脱がせあいながら、俺たちはおしゃべりを続ける。
「打木ちゃん、でっかいほくろあるのな」とか、
「打木ちゃん、ここ、さわって。」とか、言われるたびに、俺は訂正をする。
「名前で呼んでください。呂将って。」
俺は、息を荒げて潤さんの身体に沈み込んで、相槌を打ったり、言われた通りにしたり、打木ちゃん、と呼ばれるたびに、訂正した。
潤さんの身体はすべっこくて、肌を合わせるたびに、くすぐったいような、もどかしいような、変な気持ちになる。
俺は今、潤さんの脚を開かせて、潤さんの中に入ろうとしていた。
いざとなると、俺はうろたえてまった。
「潤さん、俺、童貞なんです、痛くしたりしたら、本当にすんまへん。」
素直に白状すると、潤さんは、
「大丈夫だから、こっち来いよ。」と優しく言ってくれて、俺は年上の包容力、みたいなもんを感じてしまった。
潤さんが、素っ裸で俺の方に両手を広げてる。
エロい、と思った。褐色の日焼けした肌が、えろい。
そうして、夢みたいな状況や、と思う。俺は今、一人の人と正面から抱き合ってるんや。何しろ根暗やから、一生ないと思てたわ、好きな人とこうできることなんて。
ゆっくりと、潤さんの中に入る。
潤さんの身体は暖かくて、冬の寒い空気の中で、俺のよりどころはそこしかないんちゃうかみたいな気分になった。
「呂将。」
と、いきなり、出し抜けに潤さんが名前を呼ぶ。
ほぼ、吐息みたいな、掠れた声やった。
「素直に言っていいかな、俺、怖いんだ。本当は、セックス嫌いなの。」
潤さんの身体の振動が、こっちにも伝わって来る。
「昔、小さい頃母ちゃんの連れ合いにいたずらされて、それからずっと、セックス苦手なんだ。」
衝撃を受けた。
「それなら、なんで俺のこと誘ったんですか。」
俺、潤さんの嫌がること、しとうなかったわ。なんで誘ったんや。
なんで、という気持ちでいっぱいになった。
「どうせ呂将も、抱きたかっただろ、俺のこと。」
どうせなら、早いとこやっちゃった方がいいし、もったいぶって見捨てられたくなかったんだ、と独り言みたいに、潤さんは言う。
「あ、あの、…」
なんて声を掛けていいのか、わからんかった。こういう話が出てくるとは思わなくて、そういう話の時の言葉のレパートリーが、俺には少なすぎた。
「いいんだ。呂将となら、平気だから。」
ぎゅ、と俺を抱きしめてくる潤さん。俺の胸がきゅっと苦しくなって、俺は言った。
「潤さんの嫌がることしないようにしますから…」
「呂将となら、本当に平気。」
潤さんは言う。表情も、しっかりした目だし、大丈夫やと思った。
俺は、目をつぶって潤さんの身体のぬくもりだけ感じてみた。
外では木枯らしが吹いとるし、家の中も静かにミシミシいっとるけど、潤さんの身体は暖かかった。
「潤さん、体、痛かったり、嫌やないですか、動いてもいいですか。」と聞くと、
「いいぜ、だいじょうぶ。」
と、潤さんが答える。
俺は、潤さんの胸にすがるようにしながら、腰を動かしてみた。
しびれるみたいな快感で、頭が真っ白になりかける。
でも、いつでも冷静な部分を残しとかなあかんと思った。
いつ、潤さんが嫌になるかわからんから。
でも、体は初めてのキモチヨさに、震えまくっていた。
もっと快楽を貪りたいと、脳の奥の爬虫類の部分がわめいとる。
そいつを制御しながら、潤さんが気持ちいいように、俺は潤さんの様子を見ながらゆっくり動いた。
潤さんも、俺の自惚れではなくて、ちゃんと気持ちよさを感じとるみたいで、時々、んっ、っと鼻にかかったような声を出す。
「ん、あ、…は、」
潤さんが胸を反らす。
鍛え上げられた胸筋が、月の光を受けて、淡く見えた。
「呂将、もっと、がつがつ来て。」
そう言われて、俺の中の必死で制御していた部分がバチっと焼け切れた。
そっからは夢中で、よう覚えとらん。時間にしたら30分にもならないと思うその間、潤さんの熱い息が首筋にかかっとったのだけ、憶えてる。
気が付いたら、二人でもつれ合って、ぐったりしながら荒い息を吐いてた。
外は極寒のはずやのに、汗びっしょりで暑くて、潤さんの身体から離れて、仰向けになる。それでも、身体だけが目当てだという風に思われたくなくて、潤さんの手に自分の手を絡めた。
大丈夫や、潤さん。ちゃんと好きです。
「りょ、しょう、…意外と、絶倫、なんだな。」
まだ弾んどる息の中で、潤さんが言う。
絶倫とかはようわからんけど、俺にだって人並みに性欲はある。
「…良かった、です。潤さんも、そうなら、ええんですけど。」
俺もまだ、息が乱れとる。
「こんな俺でも、あんた気持ちよくなるんだな。」
と言って、潤さんは寂しそうに微笑んだ。
その夜は、ぐっすり眠れた。
ただただ暖かくて、満足感があって。
潤さんもそやったら、ええな。
寝る前にそう思ったけど、神様、俺は、やっぱり間違いを犯してたんやろか。
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