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子守してる気がするんやけど、俺
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何してんのやろ、俺、という気分になった。
潤さんに会いたくて、ウキウキしながら来たのに、潤さんは出てこなくて、代わりに出て来てる他の人格の世話をしとる。
今俺は、零とテレビを観ていた。
嫉妬心が強い零にこんなことを言ってはあかんと思いつつ、俺は、気付いたら、
「潤さん、出て来ぉへんの?」なんて、思わず零に訊いてしまっていた。
「潤は当分出てこれないだろうな。」と零。
「あいつ、俺が男と寝るの嫌がるんだ。なんでなんだろうな。」
気持ちいいし、求められてるってはっきりわかるから、良いじゃねぇか。と、零は言うが、俺は、その意見には反対や。
「零くん、あんなぁ、エッチはそんなやたらするもんやないんや。大切な人とだけ、するもんなんや。」
「そうかな。」と、零は首を傾げる。
「でも、大体の人が俺とするの、喜んでくれるし、別に一人とだけヤらなくたって、いいだろ。」
俺には、零が何でそんな価値観を持ってしまったんか、それが、わからん。
「あかんもんはあかん。」俺は、自分が好かれてるというのを確信して、零に言い聞かせた。
「俺は、そういうことする零は、嫌いや。」
「そんな…」
傍目にも可哀想なくらいに、零はしょげる。
「俺のこと、嫌いにならないでくれ。お兄ちゃんみたいに、どっかいかないで。」
「誰なんや、お兄ちゃんって。」と訊くと、
「俺のかぁちゃんの、最後の彼氏だよ。いっつも優しかった。あんたは、見た目がちょっとお兄ちゃんに似てる。」と、零は答えた。
なるほど。それで、零は俺のことを憎からず思うとんのか。
「どこにもいかへんよ。俺、零には、もうちょっと自分を大事にしてほしい。」俺は言った。
「一人でいると寂しいんだ。」と零がすねたように言うんで、
「寂しいときは、俺にメールし。大抵は返事するさかい。」と言ってなだめた。
まったく、俺は、潤さんと付き合い始めたはずなのに、なんや大所帯に入ってしまったようや。嫌かどうかで言うと嫌ではないけど、考えることが多すぎててんてこまいや。
今度来るときは、晃に塗り絵でも買って来よかな、と俺は考える。
誤解でえらい嫌われてしまったけど、コミュニケーションする必要があるな、と考えた。
零は、一緒にテレビを観ていると、俺にすり寄ってきた。
あかん、なんや変な気分になってしまいそうや。
俺は、零に手を出していいもんかどうか、悩んでる。
何となく、零はまだしていいことと悪いことがわかっとらんさかい、未成年と同じで、エッチなことはしたらあかん気がしてる。でも、零としては俄然乗り気らしくて、俺の手を握ってきた。
「打木ちゃ―ん、寒いし、ヤろうぜ。」
「さっき自分を大切にせぇいうたやろ。」
「でも、あんたは潤の恋人だろ。」
それなら、俺の恋人でもある、と、零は言う。
言いながら、俺と自分の手を恋人繋ぎにしてくる。
「あかん、お前は正直、まだ心が子供過ぎる。もう少し、自分のすることちゃんと分別ついてから、そういうことせなあかんよって。」
「みんな最初はそうやって、まともなふりするんだ。でも、あんただって俺みたいなのは好みなんだろ。」
そうや。好みや。俺は、正直、据え膳状態で、しかも迫られて、良心が揺らぐ。逃げ出したくなりながら、零の肩を抑えて、距離を置いて向き直らせた。
「頼むから、潤さんと喋らせてくれ。お前がそういう風にするなら、今日は帰る。」
零は、嫌だというように首を振った。
「でも、潤は出て来ないぜ。あいつは、出てこようと思ったら、いつでも出て来れるんだ。それなのに出て来ないってことは、寝込んでるんだろ。」
次第に、零に腹が立ってくる。なんや、こいつは。
潤さんが寝込む原因を作ったくせに、責任感も感じずにへらへらしとる。
いいや、でも、と思い直した。
零は子供なんや。見た目は潤さんと同じやから、俺より年上やけど。精神年齢が幼いんやろう。
「わかったけど、俺は、零がちゃんとするまで、エッチなことはお前とはせぇへんからな。」
しっかりと釘を刺すと、零は不服そうにしながらも頷いた。
「わかったよ。…じゃあさ、俺と遊んでくれる?」
と、零が出してきたのは、テレビゲームやった。
野球のテレビゲームで遊んでる零を見ると、やっぱり高校生くらいかな、と思う。
俺は、他人観察が得意や。
中学生の頃は、両親の転勤で転校を繰り返してた。それで、クラスに馴染むために、良く他人の顔色とか、精神年齢を伺ってて、そいつに合わせた話をして、場を乗り切ってた。
だから、この鑑定は専門医やないけど、ある程度正しいと思う。
多分、普段は潤さんが表に出てるから、晃も零も心があまり成長してへんのやろな、と俺は推測した。
「打木ちゃんとやるゲームは楽しいな。」と、零は言う。なんか、そうしていると零の年相応で、俺はホッとする。
「そか?俺、強いからな~」と、俺は、またも零を負かす。
「あ~、また負けた~。…どうやったらうまくできるんだ?なんかコツとかあんの?」
「ま、経験やな。」
俺は、もう一時間くらいやってしまったゲームを終わらせる。
確か、多重人格を治していくには、メインの人格が成長することと、他の人格が穏やかになることや。俺が塗り絵を買ってこようと思ったのもそのためやし。
他の人格は、メインの人格のキツイことをもう肩代わりせんとええんやと気づいたら、普通、メインの人格に吸収されていくもんらしい。
潤さんが晃に吸収されてしまってもいいのかな、と俺は自分の心に聞いてみるけど、何より潤さんが楽に生きれることを、俺は優先したいなと思う。
我ながら、出来過ぎた恋人か?
「ほな、今日は帰ろうかな。」と言うと、
「ヤダ。帰るな。なぁ、潤もしばらくしたら出てくるかもしれないし、今日は泊ってって。」と零は俺にすがる。
そっちが頼んどる癖になんで命令口調やねん、と思いながら、
「ええよ、そんなに言うんなら。」と、俺は了承した。
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