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戸惑い3
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_目の前には、屈託のない笑顔を咲かせる僕と真斗。
たった数ヶ月前のことなのに、はるか昔に感じる。
だって僕はもう…
そんな笑顔で笑えないから。
なんだか騒がしく感じてふっと目を開けるともう帰りの準備をしていて、やっぱり今のは夢だったのかと思いながら教科書を纏める。
「よく寝てたな〜」
「疲れてたのかもね、意外と」
他愛もない話を真斗と交わし、もう放課後。
家に帰りたくなくて、だけど待ってるの昨日を思い出しても嫌で。
もう、苦しくて…
『たすけて』なんて4文字が喉を通って出てきそうになる。
だけどあんなことをしてしまったことなんて知られたくないからグッと堪えて、また明日ねって笑う。
_家までの道のりが鉛のように重かった。
家が見えてきて前に人影がないことに安心する。
もしかしたら揶揄ってただけかもしれない。
アイツ本気にしてるぜって笑いたかっただけかもしれない。
そんな~かもしれないを繰り返すけどそこまで現実は優しくないことを僕は知ってる。
二階建て、一軒家。もう僕しかいない。
広くて、僕以外の気配なんて何も無い。
もう日課になった、おばあちゃんの遺影に向かって線香をあげる。
家で寝る時はいつもしてること。それなのにいつもより寂しい。
_シンと静まり返った家に線香の匂いがふわりと漂っていた。
それから何十分かは玄関を警戒してずっと見張ってたけど、人が来る気配すらなくて1時間後には部屋でくつろいでいた。
「通知も…無し」
一切連絡もなく、もう6時を回ろうとしていた。
_その時
ピンポーンと地獄のチャイムが鳴り響いた。
「…ッひ、、あ、アイツ…?」
恐怖で震える身体を戒めて、1階へ降りインターホンの画面を見てみると…
不吉に笑うアイツが居た。
_昨日の光景がフラッシュバックして膝から崩れ落ちる。
呼吸は浅くなって、
心臓がバクバクと鳴って、
目からはどんな感情か分からない涙も出て、
どんなに強がって普通に過ごしたって、僕はアイツに囚われている。
もうこのまま居留守を使おうかと震える膝で踏ん張って立ち上がった時、逃げるなんて許さない、ともう一度インターホンが鳴った。
これ以上待たせたら、もっと酷いことされる…
そう、本能で察知して、今開けます、と画面越しに言った。
「…本当に来たんですね」
こんな、強がったって心の奥底では逃げたいと叫んでるくせに。
純情な子を演じた方が酷いことされないかもしれないのに、どうしたって反抗してしまう。
「凪ちゃんこそ、1回目無視したよね?なんで?」
「…すみません、寝てて」
こんなのすぐバレるのに…
「ふーん、まぁいいや。お邪魔しまーす」
僕の横を通って家に入り込む。
家まで汚れた、なんて思った。
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