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今日の古文は和歌についてだった。
「え〜昔の和歌には恋愛をテーマに書いてるものが多く………」
黒板にツラツラと書いているその和歌は額田王の
"あかねさす紫草野(むらさきの)行き
標野(しめの)行き
野守は見ずや君が袖振る"
だったり、大津皇子と石川郎女の
"あしひきの山のしづくに妹待つと
我立ち濡れぬ山のしづくに"と
"我を待つと君がぬれけむあしひきの
山のしづくにならましものを"
だったりと恋愛和歌集を集めたもので、今も昔も恋愛は人の悩みの種であると先生は言う。
その言葉を他人事のように聞き流しながらも、頭の中で恋愛のことを考えていた。
恋愛なんて馬鹿らしい。
誰かに恋したところでそれが必ず叶う訳でもないのに、というか殆どは叶わないのにそれでも人は恋をする…なんて非効率的なんだろう。
それなら好きな人なんて作らずに友達と遊ぶ方が楽しくない?
そこに恋だの愛だのが無い関係性の方が楽じゃない?
ほんと、恋愛なんて意味がわからない。
…のくせして、目線はアイツを追っている。
気持ちが悪い…のに、こっちを振り向いて欲しいなんて変な気持ちが芽生える。
おかしい…こんなのおかしいって分かってるのに、分かりきってるのに、それなのに未だに目を離すことが出来ない僕はどれほど滑稽なんだろう。
「………」
気付けば授業の3分の2を窓に向けていて、急いでノートに板書を写すけど頭の隅っこで恋愛についてまた考えていた。
「凪、保健室行くか?授業に身入ってないだろ」
チャイムが鳴りほっと一息ついた時、真斗からそう声をかけられる。
「うん…そう、しようかな」
きっとこのままここにいても頭から離れないなら、寝てしまって思考を閉じてしまおう。
そう思って言葉に甘えた。
「じゃ行くか」
「うん」
真斗と2人で保健室までを歩く。
2人で歩くなんて日常茶飯事なのにどこか違う気がして、あぁ僕が真斗以外に興味を持っているからか、と思った。
真斗が全てで、真斗以外は要らなくて、真斗の隣にずっと居たくて。
そんな僕の気持ちは、この数日で変わるぐらいの薄っぺらいものだったのかな。
そんなことを自分で考えては落ち込んで、悪循環だ。
「ほら着いたぞ」
「ありがと、もう戻らないと時間危ないよ?」
保健室の時計を見ると、授業開始5分前を切っていて、ここまで来るのにかかった時間を考えるとすぐに戻った方がいいものだった。
「いや、サボる」
「え、不良じゃん」
「いいんだよ、凪が変なら俺が見とかないとだろ」
…え?
「…僕、変かな?」
どこかおかしかった?まさか…バレた、?
「ん〜なんだろうな、なんかどっか変なんだよ。多分長年の勘?かな」
「…なにそれ」
顔が赤くなったのがバレないようにササッとベッドに入り込み布団を上まで被る。
なにそれ、なにそれ…
それって真斗だけが僕のこと気づけるってことじゃん。
それって…特別ってことだよね?
真斗にとっても僕は特別だったの?
ねぇ、真斗…僕、自惚れてもいいかな?
僕にとって真斗がそうであるように、真斗にとっても僕が特別なんだって思ってもいいかな?
先生が来たら俺が言っとくからって優しく背中をポンポンと叩いてくれて、結局顔は見れないまま眠りについた…_
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