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嫌い2
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次に目を覚ましたのは、心地よく揺れる車の中だった。
「…ん……っ、?」
「あれ、起きた?」
寝ぼけ眼で運転席の方を見ると、ハンドルに片手を添えてこちらに目線を向ける鳴海先生が。
「あ、れ……ぇ?なんで…なるみせんせー、が…?」
「まだ寝ぼけてるのかな?ここは俺の車で、倒れた吉沢くんを家に送り届けてる途中だよ」
「倒れ……ぁ!!!!真斗!真斗は?!」
そう、そうだ!!保健室で真斗が…!!
「ちょっと落ち着いて!結城くんはあの後、救急車で運ばれて今安静にしてるよ、明日にでも意識は戻るだろうって。だから心配しないで?」
「そう、ですか…明日…」
今日は月曜、明日は火曜。
お見舞い行きたいけど平日なんだよな…
真斗と暫く会えないとか、悲しすぎて…
自分の胸にあるシートベルトをギュッと握り潰して悲しみを堪える。
「…そんな落ち込まないでよ、結城くんだってそんな顔させたくないんじゃないかな」
ちょうど信号が赤に変わり、優しい声色で僕にそう言った。
「そんな顔って…どんな顔ですか」
「眉間にしわ寄せて、今にも泣きそうな顔」
ハンドルに顎を乗せて、流し目でこちらを見ながら僕の眉間を指でつんつんと突っつく。
サラサラのストレートの髪から見える涙ボクロはより1層妖艶さを醸し出していた。
なんでか顔を見合わせるのが恥ずかしくなって、ぷいっと窓の外へ顔を向けるとタイミング良く信号が青に変わって先生は運転に集中し出す。
しばらくしたら見慣れた風景に変わっていき、僕の住んでる家の近くにまで車が来たから、ここで大丈夫ですって言ったらちゃんと家まで送らせてって言われて、無下にすることも出来ずそのまま家の前まで送って貰った。
「今日はありがとうございます、送ってくれて助かりました」
車を降りて、180度振り返りお礼を口にする。
本当に鳴海先生が居なかったら真斗はどうなっていたんだろうと考えると鳥肌が立つ…
「全然気にしないで、結城くんと早く会えるといいね」
「はい!それじゃあ失礼します」
もう遅い時間だし長々と話すのも面倒臭いだろうと思って早めに切り上げて家に入ろうとした時
「あ、待って!!」
って静止の言葉が後ろから聞こえた。
「?なんですか」
「えっと……これ!俺の番号だからもし何か結城くんのことで聞きたいことあったら連絡ちょうだい?あんまり一人で抱え込まないでね」
そう言って、殴り書きされた電話番号を車越しに渡される。
果たして生徒が受け取っていいものなのか、とか考えたけど僕より先生の方に真斗の情報は入ってくるに決まってる…と思ってありがたく頂戴した。
「すみません、ありがとうございます。それじゃあ今度こそ失礼しますね」
「そうだね、また明日」
「はい」
家の中に入ったはいいものの、この紙をどうしようと悩んで、携帯に登録したあとリビングのゴミ箱に捨てた。
ちょっと絡んだだけの先生がこんな個人でのやり取りをするのかってちょっと気味が悪かったのと、個人情報だから早めに処分した方がいいと思ってした決断だったけど…
後にどうしてリビングに捨ててしまったんだと後悔することになる。
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