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嫌い4
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「先生ッ!!」
_午前の授業が全て終わり、チャイムがなった途端、購買に行くことも忘れて保健室へとダッシュした。
「吉沢くん、廊下は歩いてくださいね」
「すみませーん、ってあの真斗の容態は、?」
「まぁまぁ、こんなところで話すのもあれですし、保健室入りましょう?」
その通りに、中に入って椅子に座る。
薬品の匂いが気持ちを落ち着かせた。
「それで…」
「結城くんは順調に回復していると来ました。退院も明日明後日だと思いますよ」
「そうですか!よかったぁ…」
真斗、元気になってくれてよかった。
「吉沢くんは結城くんに連絡入れないんですか?持ってるんでしょう?」
「まぁ…でも、その…」
確かに自分で真斗に連絡入れればいいだけ。
先生の言ってることは至極真っ当なこと。
だけど…
真斗が倒れたのは僕のせいで、なのに元凶の僕が真斗に連絡してもいいものなのか…なんて考えたら連絡する勇気は出なかった。
無意識に視線は下を向いて、拳には力が入る。
「…お腹、すきませんか?食べましょう?」
そんな僕の様子を察してくれたんだろう。
話題を逸らしてくれた。
「お昼…あ!今日は購買のつもりだったんです。行くの忘れた…」
保健室に来ることしか頭になかった、、
しかも自覚したら急にお腹すいてきた…うぅう!!!今から行ったって余り物しかないよなぁ…
「それなら確か…ちょっと待っててくださいね」
先生は何かを言いかけて、待っててくださいと保健室を出ていく。
その言葉通りに静かに椅子に座って待っていた。
でも暇で、くるくると椅子を回したりベットにダイブしてみたりと結構自由に暴れ回っていたらガラガラと扉が開く音がした。
「先生?」
カーテンで姿は見えなかったけど、先生だろうと思って声をかける。
「先生、さっき言いかけたのってなんだったんですか?」
そう問いかけてみても返事はなく、動く気配もない。
さすがに不思議に思って、腰掛けていたベットから立ち上がりカーテンを開けようとした時、いつの間にか目の前まで来ていたその人はカーテンを開けようとする僕の手を優しく包み込むように止める。
その手は優しくて、暖かくて、だけど震えていた。
「誰、ですか?」
返答はない。
手を離して、無理やりにでも開ければいいのにそんな気は起こらなかった。
ただカーテン越しに感じる誰かの体温がとても安心した。
誰かわからない。もしかしたら嫌いなアイツらかも。もしかしたら変質者かも。
考えればこんなの可笑しいのに、どうしてか信頼できると思っている。
この人は…きっと大丈夫
_そうして時が過ぎ、パタパタと階段を駆け降りる音が聞こえて、先生だ、って思ったら目の前のその人は優しかった手を離して、僕に姿を見せないまま後ろの扉から出ていった。
「吉沢くん!これ、職員室で余ってたお弁当だから良ければ…吉沢くん?」
「あ、いえ!ありがとうございます、有難く貰いますね」
_もう少しあの時間を過ごしたかった…なんて。
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