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嫌い5
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それから午後の授業が終わり、先生の車で真斗の病院へと向かうことになった。
「昨日に合わせて、今日もすみません…」
「いやいや全然大丈夫だよ、シートベルトはした?」
「はい!大丈夫です」
「それじゃあ行こうか」
_道中、昨日のことについて詳しく先生が教えてくれた。
真斗を発見して救急車を呼んだ際、運悪く近くの病院が空いてなかったそう。それで遠い病院に運ばれることになったから今、車で向かっているという。
そして真斗はあの時軽い脳震盪を起こしていたが、命に別状は無かったという。
「とにかく無事でよかった…」
真斗がいなきゃ僕は前を向けない。
やっぱりダメだ、ダメなんだ。
真斗がいてくれなきゃ僕は…
「あ、吉沢くん、頭にゴミついてるよ」
少し俯いて前かがみになった時、見えたのだろう、先生からそう言われた。
「え、どこですか?」
自分で色々触ってみるけど、もうちょっと左とかああ行き過ぎ、とかでなかなか取れない。
「んん〜?」
「ちょっ…と待ってね、よしっ」
信号が赤になり目線が合う。
先生は取ろうとしてくれるんだろう、徐々にこっちに近付いてきた時、不意に香水の匂いがして、なんだか恥ずかしくてギュッと目を瞑った。
「はい、取れたよ」
目を瞑っていたら頭上からそんな声が聞こえて、あぁ取ってくれたんだってどこか安心した。
「すみません、ありがとうございます」
「いいえ、あ、もう少しで病院だよ」
…なん、だろ。
先生が近付いてきた時、恥ずかしい?いや違う…なんて言うかつかみどころのないような…少しゾワッてした。
なんでなんだろう、って考えてる間に車は病院に着き、真斗のいる階へとエレベーターで進む。
辺りはもう夕焼けに染まっていて、ビルの影が伸びていく。
うっすらとエレベーターに映る自分は、どこが、とは言えないが、嫌いな自分に近づいている気がした。
先生に着いていき、真斗の病室を3回ノックする。
「はーい」
「真斗ッ!!!」
「えっ!凪?!なんで!」
声が聞こえた瞬間、もう止まらなくて病院とは言え思いっきり走って真斗の元へ向かった。
「真斗〜!元気でよかった…」
「うわ!ったく凪は大袈裟なんだよ…えっと確か鳴海先生、ですよね?」
「そう、吉沢くんをここまで送ってきたんだ」
「すみません、ありがとうございます」
「ねぇねぇ真斗、まみさんは?」
「母さんは仕事中〜ついでに父さんもな」
「えぇ〜!会いたかったぁ」
「またすぐ会えるって」
「…2人は家族ぐるみで仲がいいんだね」
「え?あぁ、はい。っていってもこいつが俺の家に入り浸ってるだけなんですけど」
「そんな言い方なくない〜?」
数日ぶりの真斗、誰にも邪魔されたくないけど、先生がここまで連れてきてくれたんだしそんなこと言えない。
それにもうすぐ面会時間が…
「感動の再会のところ悪いんだけど、もうそろそろ出ないと。面会時間が終わっちゃうよ」
先生からそう言われ、分かってるのに足が動かない。
「………」
「凪?そんな辛気臭い顔しなくてもすぐ退院するし、明日だって来ればいいだけだって」
「…うん、じゃあまた明日ね?」
「おう待ってるわ」
「それじゃあ行こうか」
病院から1歩1歩と離れていく度、悲しい思いと安堵の気持ちが交差する。
また暫く会えないんだって悲しいのと、バレなくてよかったって安心してるのとでもう心がバラバラ…
「吉沢くん、そのまま家まで送っていくね?」
「はい、ありがとうございます」
窓の外へ目を向けてみてもキラキラと光る街灯が通り過ぎてくだけ。
ピカピカ、キラキラ
そんな光は僕の心の黒い部分を嘲笑ってるように見えた。
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