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再会4
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そうして無情にも時は過ぎ、まみさんへ返事も出来ぬまま、両親との面会を迎えた。
「お母さん…か」
口に慣れないその呼び方。
どんな人なのかも想像がつかない。
あと5分で約束の時間。
店内に流れるBGMを聞き流しながらカランコロンとお店の扉が開く音を聞いていたら、コツコツとこちらへ向かってくるひとつの靴音が聞こえた。
ここは店内の1番奥。
だからこの音は…
「初めまして、かな。元気になったのね凪」
…吉沢美波さんだ。
「あ、初めまして…席、どうぞ」
「ありがとう」
その人は黒のスーツを身にまとっていて長いロングのサラサラな髪が大人の女性を醸し出していた。
「えっと、何か注文しますか?」
「そうね…すみませーん」
「はい、ご注文はお決まりでしょうか」
「私はアイスコーヒーを、凪は?」
「えっと、ココアで」
ココア…なんてお子様っぽいな。
ていうか、本当に僕のお母さん?
思ってたより若そうに見える…
「あの…僕のお母さん、ですよね、?」
「えぇ、私は松原美波。もう吉沢の姓じゃないの。年齢は33。だから、16の時に貴方を妊娠して産んだのよ」
「16!?」
僕より年下だよ、、!?
「あの時は2人とも馬鹿でねぇ……子供が出来たって分かってからやっと事の重大さが身に染みた…。でも私たちは結婚させて欲しいって親に頼んで渋々了承を貰って…でも籍を入れるなら子供には会わないでって言われた。お母さん…だから凪にとってのおばあちゃんね。その人がまだ学生の貴方たちが面倒を見れるのって言って何も言い返せなくて…死ぬほど痛い思いをして産んだあなたの事をもう見れないなんて…苦しくて、苦しくて、でもそうするしかなくて…今更謝るなんて狡いけど本当にごめんなさい。洋二の分も謝るわ、ごめんなさい」
「……いえ、そんな…」
「…でも結局私たちは上手くは行かなかった、いや学生結婚なんて上手くいくはずがなかった。仕事をするようになって忙しくなって、すれ違うようになって…23の時に離婚したわ。それからは洋二と連絡も取り合ってない。でも勤め先は知ってるからもし凪が会いたいって言うなら会わせることはできるけど…会いたい?」
「お父さん………いや、大丈夫です」
「そう、もし意見が変わったら遠慮なく言ってね」
それからお互い気まずくて店員さんが飲み物を届けてくれるまで無言だった。
「…ココア、好きなの?」
「えっ?あ、甘くて暖かくて、好き、です」
「そう…おばあちゃんも甘いのが好きだったわ」
「あ…確かに、よくココアあった…」
キッチンにはいつもインスタントのココアがあって、よく午後におばあちゃんが作ってくれた。
甘いココアは心も溶かしてくれるのよって。
「おばあちゃんの口癖だった…甘いココアは心も溶かすって。正直意味はわからなかった、だけどきっとそういうことなのね…」
「え?」
「心を溶かすって、今の貴方みたいに笑顔にさせるってことなのね…今更気付くなんて本当に馬鹿…」
「え、がお?」
僕、笑ってた?
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