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「うん、美味い」
「そうだな」
今日の具は、ラードンにチーズ、肉にきのこか。
「それで、彩貴」
「なんだ」
もくもくと、キッシュを口に含みながら、悠牙がニヨニヨとまたあの笑い顔をした。
「尻の、それ。どんな感じだ?」
「っ…」
食事中くらい、忘れさせろ!
思わずギッと睨んだが、悠牙はにんまりと愉しそうに笑っているだけで。
「詳しく説明してもらいたいな」
「っ、不快だ!以上!」
そんなもの、事細かに説明したくない。
何を悪趣味なことを言い出すのだ。
ツンとそっぽを向いて、雑に答えれば、悠牙の笑みはますます深くなった。
「ブ〜ッ、不合格デ〜ス。ちゃんと説明してクダサイ」
っ!この男!
嫌味ったらしい丁寧語が、非常に頭に来る。
「これも仕置きのうちだぞ」
「っ…」
そうやって、時々真面目なトーンを含むのもずるすぎる。
「くそっ…」
「彩貴?」
「っ〜!言えばいいんだろうっ、言えば…」
くそぉ、ニッと笑って「うんうん」なんて頷いている悠牙が腹立たしい。
「くっ…尻の、穴のところが…常に広げられていて…変な感じだ…っ」
「ふむふむ、なるほど?それで」
まだっ?
「っ…な、かは…苦しいほど、では、ないが…異物が入っている感覚が…気持ち悪い」
「なるほど、なるほど」
きさま…。
「本来っ、ものを入れる場所ではないのだっ!それを仕置きだからとっ…このような目…屈辱と苦痛と羞恥以外にない!」
ついに腹立ちも限界に達し、ギャンッと叫んだ私に、悠牙はにんまりと笑った。
「屈辱と、苦痛と、羞恥」
「あぁ」
「快感は?」
「は?」
いや、この男は、言うに事欠いて何を言っているのだろう。
「だっておまえ、恥ずかしいの、好きだろう?」
「はぁっ?」
いや、もう完全に、この男は痴れ者なのか。
思い切り素っ頓狂な声を上げてしまった私に、悠牙はニヨニヨと笑って首を傾げていた。
「意地悪をされるの、ちょっと気持ちがいいよな?」
「きさま…?」
悠牙の発言は、完全に理解の範疇を超えていて、私は目を点にした。
「クスクスクス、自覚ない?」
Mっ気があるはずなんだけど、と笑っている悠牙の意味は分からない。
「まぁ、ナカのそれで快感を拾えるようになるのはまだ先か」
楽しみだねぇ、と笑み崩れている悠牙には、なんとなくゾッとした。
そうして、悠牙だけがご機嫌で楽しそうな、私の方は不快で心地の悪い昼食の時間が終わり、執務に戻ると言う悠牙を見送った。
「ふぅ〜…」
それからすぐに寝台にうつ伏せに寝そべった私は、暇つぶしにと持ってきてあった本をパラパラとめくっていた。
「う〜ん…」
後ろのモノからは極力意識を逸らし、物語に集中しようとは思うが、うっかり体勢を変える度にグリッと中で存在を主張するソレには、一向に慣れない。
「はぁっ…」
本を読むのをやめ、バタッと寝具に突っ伏してしまいながら目を閉じた。
一体いつまで、私はこんなモノを入れておかねばならないのだ…。
許される目処が立たずにげっそりとしてくる。
そこに、不意に桧央が側までやってきた。
「あ、の、さいき様…?」
「んっ?あぁ、桧央、どうした?」
のそりと顔を持ち上げれば、桧央がうろうろと目を彷徨わせてモジモジしている。
「桧央?」
「あ、いえ、その…」
「なんだ」
「いえっ、その、余計なお世話かもしれないけど…っ、冷やすもの、なにか…持ってくるか?」
「はっ?」
いや、突然の、その申し出はなんなのだ?
わけが分からず首を傾げた私に、桧央は思い切ったように口を開いた。
「あの、だってさっき食事のとき椅子に…」
「うん?」
「今だって、その、うつ伏せになっているから…」
「は…っ?」
あ。
「い、いやっ、これは…」
「いい。いい。分かる。おれも、弥景様に、されたから…」
だから言わなくていい、と言う桧央に、私は目を見開いた。
「は?弥景に…?」
「うん。この前、ゆうが様に薬を盛ったとき…」
あのとき…。
「えっ?」
いや、まぁ、仕置きにと牢で一晩反省させられたことは知っていたけれど、まさかその間中?
「痛い、よな」
はははっ、と笑う桧央に、私は首が傾いだ。
「そうか…?まさか桧央は、そんな太いのを?」
私は別に痛みまではいかないけれど。
「太い?っあ〜、太いっていうか、おれは平たいので…」
「は?」
いや、待て、ちょっと待て?
何の話だ?
「さいき様は…鞭だったのか?」
「………っあ!」
あ〜っ。
あぁぁ。
「平たいって…」
「板みたいなやつ…。お仕置き台に括られて…」
うわぁ。
うん、分かった。
私と桧央の間に大きな思い違いがあることが。
だから『冷やすもの』で『痛い』のか。
「いやっ、違う。大丈夫だ。私は打たれていない」
「え…?」
「いや、だからと、何の仕置きを受けているのかは詮索しないでくれ。思いもかけず、そなたが受けた仕置きの内容を知ってしまったことは…まぁ互いが、あれだ」
責任の所在は五分五分だろう。
「っえ?あっ、おれ…」
てっきり、と狼狽える桧央に、私は首を振った。
「いい。気にするな。私が苦しんでいると思い、気を利かせてくれたのだろう?」
「っ、ん、おれ、またさいき様に庇ってもらっちゃったから…」
あぁ、そうか。
桧央の分も、と私が引き受けたから。
「それは、私の振る舞いを考えれば当然のことだ。うん、それより桧央」
「はい」
「何か甘いものと…茶の用意を頼めるか?」
いや、もう、なんだか無性に恥ずかしい。
赤くなりつつあるだろう顔を、ボスッと枕に埋めながら、私は桧央に所望した。
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