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声優になりたい理由!
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(信じらんねー……俺が『アイドル☆プリンス』の上条光輝役って)
え? てかこれ半年後に全国ツアーとかやっちゃうソシャゲだろ? マジで?
キャリア2年の──つーか、現状ここではド新人にセンター張らせるとか、運営正気か?
合格の一報を聞いても、まったく実感が湧かない。
「おめでと、蓮!」
それでも可愛い恋人がお祝いだと言って、なけなしのバイト代でフライドチキンのバーレルなんて買って来てくれたら、ちょっとだけいい気分にはなった。
いや、ちょっとどころじゃない。むしろ、嬉しくて泣きそう。
「さんきゅ……」
「やったね。アイドルゲームのセンターキャラなんて、すごいよ!」
「だ、だよな!」
「けど、アイドル売りはされたくないって、養成所の頃言ってなかったっけ?」
よく覚えていらっしゃる。
けど『過去を変えるために選択した』とは言えないから、やんわりと濁す。
「まぁ、入ったばっかで好き嫌い言うのもあれだしさ」
「そっか。そうだよね」
チキンを手で裂いて食べ始めた未来に、俺は聞いた。
「未来ってさ、声優業界でどんな仕事がしたいわけ?」
「んー……僕はゆるいアニラジが出来ればそれでいいかな」
「へ? それマジで言ってる?」
「うん。元々、受験勉強中に聞いてた声優さんの深夜ラジオが面白くて、この世界目指したし」
そういえば聞いたことなかったけど、演技の天才の意外な経歴。
こうしてみると俺たちって、ほんとにこの2年間ロクに深い話もせずにセックスばっかしてたんだな……。
「蓮は、アメリカのおじいちゃんが見せてくれたアニメがきっかけだったよね」
「そう。ジャパニメーションはすごいぞって。で、声優なりたい! って思ったんだけど、受かった高校に演劇部なくてさ。しょうがないから放送部に入った」
「放送部って、何やるの? 校内放送とか?」
「おう。後は、学校行事の裏方。それと、朗読ボランティアとかもあったな」
「生徒相手に朗読してたの?」
「いや、入院してる子どもたちのとこに行ってさ」
「へぇ」
「児童文学でって指定だったけど、面白くないから少年マンガの音読して怒られた」
「蓮らしい」
くすくす、と未来は笑って、チキンの脂がくっついた指を舐める。
「てかさ、アニラジやりたいんだったら、まぁまぁ売れてないとな」
「うん。まずはボイスサンプルだね。蓮と一緒に録るの楽しみ!」
バイトの休みを揃えて、俺と未来は来週平日の午後にスタジオを予約していた。
事務所では、マネージャーがボイスサンプルを聞いてくれる制度がある。つっても、マネージャーはめちゃ忙しいから、仕事の隙間にとっ捕まえるみたいにして無理やり聞いてもらうんだ。こういうキャラが演じられるよっていうことをマネージャーに覚えてもらうためには、どうしても必要なプロセス。
ある意味、仕事がまだない新人にとっては、ボイスサンプルを作るのが一番大事な仕事だ。
(今回は、未来をガッツリプロデュースしてやんねーと!)
ところが──
「え? 行けなくなったってどういうこと?」
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