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「つか、お前なんでこんなとこいんの」
「いや、バイトっすよ」
「なんで?」
「なんで? お金……この辺住んでるんで、つか、え? 一個聞いていいっすか、付き合ってるんすか」
「うん」
俺はさらりと答える。本当は誰にもバレたくないけど、そんなわけにもいかないし、自分のチンケなプライドより、元春のが大事だ。覚悟を決めたのはもう去年の話。
「え、あ、あ、マジっすか。おめでとうございます」
めちゃくちゃニヤけられた。なにがそんな嬉しいんだ。
「意味わかんねえ」
「お幸せに」
「ほっとけ。働け」
「あ、戻んなきゃ怒られる……あの、その話って誰か知ってます?」
「誰も。言うなよ」
「あ、はい。はーい。じゃあ、また」
ペコペコ頭をさげて、元春にもさげて、木山は店に戻っていく。ソッコーでバラすんだろうな、あいつ。
「…………言ってよかったの?」
「いや、キスしてんの見られてっし」
「あー、そっか」
元春は俺からゴミを受け取って捨てに行く。アホなこと聞いてきたな。フリーズしてんのか。あれだけやだやだ言ってた俺があっさり他人にバラしたの、意外だった?
…………でもどうせ、誰かには言わなきゃいけないことなんだ。
一生を本気で考えるなら、遠い将来、親にも言わなきゃなんねえんだろう。そこに触れるのは気が重い。今すぐやることじゃないから、まだ蓋をしておく。
失っても痛手のない後輩にバレたところで、問題ない。学校中にバレて、俺が友達いなくなったとしても、元春はどうせ最初からゲイだって皆知ってるし、痛くも痒くもないだろ。
「ゆうくんに野菜食べさせなきゃ……」
当たり前に手を繋いで、歩くのも慣れた。
「一人暮らしって、一番食わねえの魚だって」
「あー。食べないねえ。魚にしよっか」
「めんどいんじゃねえの。なんか」
「さばいたりすれば時間かかるけど。あ、白身魚にしよう。甘酢あんかけ」
「呪文?」
「呪文」
そう言って、元春は笑った。
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