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「アル君、お、オレ、ずっとアル君と一緒、だよ」
タオとルナとが帰った後。
ヤケに静かに感じる家の中で、ミーハはオレに向き合って言った。
「タオ君やマーちゃんは、お、兄さんみたいな人、で。る、ルーナさん、は、お父さんみたいな人、だと思う。みんな好きだ、けど、アル君への『好き』は、特別、だ」
一言一言考えながら、ミーハは自分の気持ちを伝えた。そしてオレに抱き付き、ちゅうっと唇を押し当てて来た。
「こ、こういうことしたい、て、思うのもアル君だけ、だ!」
そんな風に一途に気持ちを伝えようとするのって、やっぱオレが揺れかけてたの、バレてたんだな。顔にも態度にも出してねぇつもりだったけど、気付かれてたみてーだ。
「分かってんよ」
オレはミーハに視線を合わせ、その琥珀色の瞳を見ながら、ニッと笑みを見せてやった。
作り笑いだって分かるかも知んねーけど、笑ってやんねーよりはマシだし。
「好きだぜ」
笑ったまま告げて、ちゅっとキスのお返しをする。
一旦唇を離し、見つめ合って……それから今度は、いつもみてーに強く、深く。
ぐいぐいと舌を口の中に押し込むと、ミーハが「んんっ」と甘くうめいた。
何かもう、たまんなくなって、細い体を軋むくらい強く抱き締める。
「ベッド行こ」
なんて、誘われるまでもねぇ。
「じっとしてろよ」
そう言って、「よっ」とミーハを肩に担ぎ上げる。
体格が違ぇーから、悔しーけどルナみてーに軽々とは担げねぇ。けど、小柄な恋人をベッドに運ぶくらいはスマートにやりてーし。
意地でもふらつかねーよう、両脚をしっかり踏みしめて歩くと――ミーハは怖ぇのか、それとも嬉しーんだろうか? オレにぎゅうっとしがみ付いた。
こういうの、依存っていうのかも知んねぇ。オレもミーハも、互いに互いを求めてて、そんで互いに不安がってる。
互いに執着を見せ合ってんのに、それはちゃんと伝わってんのに、些細なことで簡単に揺れる。揺れて不安になって、そんで不安を紛らわすために、深く抱き合って、熱を交わす。
最近、いつもこの繰り返しだな、と気付いた。
「ミーハ、好きだぜ! お前だけだ! 愛してる!」
オレはミーハをいつものように揺さぶりながら、「好きだ」「好きだ」と言い続けた。
しなやかな白い裸体を思う存分撫でさすり、舌を這わせ唇を這わせた。
キスマークをいくら付けても、いくらオレの白濁で染め上げても、心の奥底の不安は消えねぇ。
タトゥーにハマるヤツらの気持ちが、今ならちょっとだけ理解できた。
不安なんだ。不安だから、肌の奥、細胞の1個1個に、二度と消えねぇ所有印を付けてーと思うんだ。
じゃあ、なんでこんなに不安なんだ?
――それはやっぱ、安定しねーからだと思う。足場固めねーと、怖くて踏ん張れねーんだと思う。
なら、足場固めんのはどうするか?
――答えはもう決まってる。記憶を全部、取り戻すことだ。
そしたら、信じられる。
ミーハがオレのもんだって信じられる。ミーハも信じてくれるだろう、何があったって、オレがミーハを捨てるハズねぇって。
「ミーハ!」
唸るように名を呼んで、色の薄い乳首を乳輪ごとぎゅっとつまむ。普段は「やあっ」って痛がるくせに、揺さぶりながらだと悲鳴も甘い。
噛み付くと更に甘い。
「ふああああーっ」
悲鳴を上げて、身をよじって。でも、嫌がってねぇ。悦んでる。
「気持ちイイ?」
歯形をなぞるようにべろっと舐めてやると、「ふあっ、んー」と声が返った。
それって肯定の「んー」だよな?
「じゃあ、こっちもな」
自然と頬を緩ませながら、笑みを噛み締めるように歯を立てる。もう片方の乳輪に食いついた瞬間、また甘さの混じった悲鳴が響いた。
「あああああーっ」
背筋をぞくっと悦びが駆ける。
ふつふつと沸き起こる、ささやかな嗜虐心。
もっともっと啼かせてぇ。もっともっと善がらせてぇ。もっと。オレのだっていう、消えねぇ印を刻みてぇ。
「ああーっ、んんっ、んああああーっ!」
押し開いた両脚が、悲鳴と共にオレの両脇でぴんと突っ張った。
オレにしがみ付き、容赦なく爪を立ててたミーハの手が、ひときわ深い痛みを残して、ゆっくりとシーツに滑り落ちる。
「寝んのには、まだ、早いぜっ」
荒い息のまま囁いても返事はねぇ。深く貫いても、激しく突いても、力を失った手足がばらんばらんと跳ねるだけ。
でも、聞こえてはいると思うから。
「愛してる、ミーハ」
オレはそう言って、ミーハの右手首にキスマークを残した。
宝飾店に頼んだ銀細工のブレスレットは、あと数日でできるそうだ。
ミーハを拾った日に、同じく拾ったルビーを繋いだ、恋人の証のブレスレット。
それをはめてくれてさえいれば――この底のねぇ黒い不安も、きっと終わるんだろうと信じてた。
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