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それでも僕は君が好き Ⅲ
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智と薫は大学へ進学した。結翔は調理師の免許を取るために専門学校へ進学した。
あの時のことはお互い触れていない。智はあの後何事もなかったように接してくれたので、結翔も今まで通りに過ごしていた。
ただ、あの後智は女子からの告白を受け入れるようになっていた。
結翔は専門学校を出るとすぐに両親の経営していた喫茶店を引き継いでいた。母親が体調を崩してから、父と二人で頑張っていたが、卒業を機に両親は療養のため田舎に引っ込んでいた。
「いらっしゃいませ。」
「おう!結翔、今日もかわいいね!」
「薫!久々だね!」
「卒論がね~終わらなかったのよ。」
「そんな時期なのね。」
「ブラック濃いめでね。そういや、智は元気?」
「智も忙しそうだよ。ここにも週イチ来るかどうか。」
「まあ、でも俺より要領いいから・・・って、まさかまた彼女?」
「・・・まあ、それもあるでしょうね。」
「あいつも懲りねーな・・・。何人目だよ・・・。」
あの時から彼女を作り始めた智、もう何人目だろう。ここには絶対連れてこなかったが、もう両手いっぱいぐらいの数になるか。
「薫だって引く手あまたでしょ。」
「俺が待ってるのはかわいい男の子!」
「・・・あ、そうでした。」
「結翔を超えるかわいい子なんて、そうそういないんですよー。」
薫は入れ立てのコーヒーを飲むと笑った。
「お疲れ様です~。」
店の入り口のベルと同時に爽やかな明るい声が響いた。
「あー、今日もよろしくねー。」
「お、バイト雇ったの?」
「あ、うん、やっぱり一人だと大変で。夕方からなんだけどね。三鷹 駿くん。」
「三鷹です。」
「この人は僕の同級生で、杉並 薫。」
「どうも、薫です。よろしく!」
「高校生に手出したらだめだからね。」
結翔は笑って言った。
「えっ?!」
駿がびっくりして薫の顔を見る。
「ほら、警戒しちゃったじゃん。結翔の馬鹿ー。」
「冗談、冗談、楽しいやつだから仲良くしてやってね、駿くん。」
「あ、はい!」
駿は微笑むと、カウンターの中に入ってエプロンを身につけた。
「いらっしゃいませ、あ、智さん。」
「こんばんは。」
駿がどうぞといつものカウンター奥の席を案内する。最近は毎日智はこの閉店30分前にやってくる。結翔はいつもように冷蔵庫から材料を取り出した。
駿はいつもこの光景を見ると、阿吽の呼吸で過ごす夫婦のようだなと感じていた。心なしうれしそうに見える結翔。その姿をじっと見つめる智。この間に入る隙間はないといつも思っていた。
駿はいつものように店の後片付けを始めながら、その光景を眺めるしかなかった。
「駿くんも一緒に食べよう。もうすぐ出来るから。」
油のいい音を感じながら、今日はとんかつかと駿は思った。
カウンターの智の椅子を一つ開けた隣にいつも駿は座る。今日も二人をじっと見ながら夕食に手を伸ばした。
いつもは寡黙に食事をする智が駿を見た。
「駿くん、いつも僕らのことじっと見てるよね。」
「えっ、あ、ばれてたっすか?」
「うん。」
智は少し恥ずかしそうにうなずいた。
「あはは、智さんはいつもおいしそうに食べるし、結翔さんはそれを見てなんか幸せそうだし。見てるとこっちもほんわかするんすよね。」
駿はニコニコしながら言った。
「長年連れ添った夫婦みたいっすよ。」
「何言ってるの。恥ずかしい。」
結翔が顔を赤らめた。
「まあな、僕たち中学からの付き合いだからな。好きな物も嫌いな物も結翔は何でも知ってるからな。」
智が言った。
「まあ、でも分からないこともあるんだけどね。」
結翔が言った。
「え?ほんと?」
智が不思議そうに聞き返す。
「付き合う女の子のタイプ。」
結翔がクスクス笑いながら言った。
「・・・。」
智は下を向くと、黙々と残った夕飯を平らげた。駿は一瞬ヒヤッとしてこのやりとりを見ていた。
「ちょっとからかいすぎたかな。智、冗談だからね。」
「あ、ああ。」
智は口ごもった。
(これって、結翔さんのささやかな抵抗なのかな・・・。)
駿はちらっと結翔の顔を見た。結翔はなに?と言うような顔を駿に向けた。
「BL本のネタになりそうっす。」
駿は場を和ませようとつぶやいた。
「なにそれ。」
結翔は笑った。
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