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それでも僕は君が好き Ⅴ & epilogue
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結翔は次の日から何事もなかったように店を開けた。だが、朝晩来ていた智はあれからパタッと来なくなった。
「連絡もないんすか・・・。もう3ヶ月ですよ。」
駿はさりげなく結翔に聞いた。
「そうだね・・・。」
寂しそうに結翔は言った。
薫は時々やってきたが、いつも黙ってブラックコーヒーを一杯飲んでは帰って行った。
来ないと思っていても、結翔は夕飯の準備をいつもしてる。駿は知っていた。
「あたし、我慢出来ないわ!明日智さんの職場行ってくる!」
皐月が席を立つ。
「や、やめてよ、皐月ちゃん。」
結翔が慌てて止める。
「そうだよ、皐月。」
「じゃあ、駿はこのままでいいと思ってるの?!」
「そうは思わないけど、こればかりは俺らがどうにも出来ることじゃないっしょ。」
駿が皐月をなだめた。
「二人ともありがとう。僕は大丈夫だから。」
結翔が微笑んだ。
「きっとあの時、僕に勇気がなかったからだよ。自業自得なんだ。」
結翔は静かに言った。
「え?」
「ううん、なんでもない。そろそろお店閉めようか。二人とも夕飯食べていってね。」
結翔がカウンターの椅子から立ち上がろうとしたときだった。
「さ、智さん?」
駿がしっかり正装した智が入口に立っているのに気がついた。
「えっ?」
智は真っ直ぐ結翔の前に立った。
「待たせてごめん、やっと決心がついた。」
智は静かに言った。そして、手に持っていた指輪ケースを開く。
「僕と一緒になってくれ。」
駿と皐月が顔を見合わせる。結翔は何が何だか分からないという顔をしている。
「今更駄目かな・・・。」
智はそれでもじっと結翔の目を見た。
「で、でも彼女さんは・・・。」
「分かれてきたよ。」
「えっ?」
「僕にはやっぱり結翔が一番なんだ。僕のことを理解してくれるのは結翔しかいないんだ。この数ヶ月、いろいろ思い出しながら考えた。」
ふぅっと智は深呼吸した。
「僕は高校の時に一度結翔を犯そうとしたことがある。自分の物にしなきゃという焦りから。未遂に終わったけど、僕はもうあの後結翔に会うたびに、どんどん手を出しそうになっていたんだ。そんなことしなくても結翔はそばにいてくれるの分かってるのに。」
智はちょっと遠い目をして話した。
「女性と付き合ったのはその後から。僕が結翔に手を出しかねない現状を彼女で何とかしようとしていたんだと思う。今思うと彼女たちには申し訳ないと思っている。」
智は下を向いた。
「結果的に結翔を逆に傷つけてしまったんだけどね。」
「それにしても、なんであんなにとっかえひっかえ・・・。」
駿は思わず発した言葉に慌てて口を塞ぐ・・・。
「・・・勃たなかったんだよ。」
智は静かに言った。皐月があんぐりと口を開ける。
「それでもなんとかしないとと必死だった。」
「そうだったんだ・・・。」
結翔は大きくため息をついた。
「結翔、僕はもう決心したよ。僕は結翔を愛してる。世間がなんと言おうと、君をこの後ずっと守っていくよ。実は僕の両親にも、結翔の両親にも会ってきた。しっかり僕の気持ちを伝えた。最初はびっくりしてたけど、最後にはみんな祝福してくれた。結翔、僕を信じて。」
「・・・はい。」
智は静かに結翔を抱きかかえると、結翔の左手の薬指に指輪をはめた。
「ううう・・・。」
駿が声を上げて泣いた。
「なんであんたが泣いてるのよ。」
皐月も若干涙ぐみながら駿の腰をたたく。
「おめでとうございます。」
「ありがとう、ふたりとも。」
「今日は帰りますね。」
皐月は駿を引っ張った。駿はあわてて鞄を手に取って、入口の札を準備中に替えた。
(なんか不思議だな。)
智が自分の部屋にいる。あの時以来、智は絶対にこの部屋には入らなかった。トラウマのようになっているんだと思っていた。
「久々だな、結翔の部屋。」
「そうだね。」
少しの間沈黙が続いた。
「改まると、なんか恥ずかしいな・・・。」
智がつぶやいた。
「結翔、先シャワー浴びておいで。」
「あ、うん。」
結翔はシャワールームへ向かった。
(今日は僕も覚悟決めなきゃな・・・。)
結翔が洗った髪を乾かしていると、シャワーを浴びてきた智が半裸の状態で戻ってきた。「あ・・・。」
そういえば成人してからの智の体を見たことはなかった。智の体はほどよい肉付きながらも締まっていて、まるでダビデ像のような・・・。
「どうした?」
「あはは、ちょっと見とれてた。」
結翔は赤くなった。
「少しは鍛えてたんだよ。」
智も赤くなる。
「結翔・・・。」
「ん?」
智はすっと近づくと、結翔の唇をふさいだ。一度経験したあのキスとは違い、優しく、そしてゆっくりと。
「智・・・。」
「抱いてもいいかな。」
そっとベッドに運ぶと、結翔のパジャマのボタンを外していった。
epilogue
「いらっしゃいませ、おはようございます。」
いつものように結翔の爽やかな声が店の中に響く。傍らには同じくエプロン姿で智が立っている。
智は上司の娘を振ったせいもあるのかもしれないが、市役所から駅前の図書館に異動になった。本人は忙しくなくなった分、結翔と一緒にいる時間が増えると喜んでいる。朝は勤務ギリギリまで喫茶店を手伝ってくれていた。
結ばれた次の日には二人で薫に会いに行った。薫は来ることが分かっていたかのように、ご機嫌で出迎えてくれた。
「おはよう、お二人さん。」
薫が笑顔で言った。智はいつものように片手を挙げる。
「おつかれっす、結翔さん、智さん。」
「あれ、駿くん。一緒だったの?」
「昨日一緒に飲みに行ったんだよな。」
薫がニコニコしながら言った。
「ちょっと相談に乗ってもらったっす。」
駿がちょっと赤くなりながら言った。
「そうなんだ。」
結翔はクスクスと笑った。
「駿、新作が出来たんだとよ。」
薫がいつものようにブラックコーヒーを飲みながら言った。
「駿くん、漫画描くんだ。」
智が興味深そうに聞いた。
「前作の続編らしいぞ。」
薫がちょっと意地悪そうに結翔に言った。
「あ、智は読まない方がいい、絶対・・・。」
あわてて結翔が言った。
「なんでだよ、駿くんの作品なら読みたいよ。」
制止を振り切り、智が薫より作品を受け取る。すぐに顔中真っ赤になった。
「あ、朝から読む漫画じゃなかった・・・。」
「だから言ったのに・・・。」
「駿くんにここ任せて二人で上に行こうかな・・・。」
「おい、こら、智、仕事しろ。」
薫が言うと、4人は笑った。
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