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〜唯人side〜
『ーーーーーーわからない』
そう、あの時俺は答えた。
だって、わからない。
まだ、あの人のことは「俺のピンチを助けてくれた人のお友達」と「学校の先輩」として認識しているから。
性格も、特徴も、趣味も分からない先輩の事が多分、俺は気になってもいないのだと思う。
今は、「伝」としか考えてないんだ。
晃さん達と、会うための伝。
それだけの為に東雲先輩を使うのは、やっぱりダメ……なのかな?
「おい、唯人。こっちであってんの?」
「あ、うん、多分」
「多分って……信用ないなぁ」
「あはごめん」
「まぁ……住所的に合ってるだろうし……もう少し付き合うか~」
あれから学校が終わると千明に声をかけられて「今日から俺がお前の見送りするわ」と言われた。
千明の家の場所を聞くと意外と近くて頼むことに。
流石にまた誰かのご厄介になるのはだめだもんね。
あ、でも千明に送って貰ってる時点でご厄介なっちゃってる?
「ちょ、唯人、どこ行ってんの。こっちだって。」
「え?あ、そっちなの。」
「うっわ、やっぱり送るって言ってよかった……」
「だって学校から直接帰るのは初めてだし」
「じゃあいつも朝送って貰ってる人に迎えに来てもらえよ。なんで帰りは来ないんだよ……」
「………………んまぁ、その内朝も、だから」
「なんて?お前の声か細くて聞こえにくいんだよ。」
「ん、うんん、何でもない」
家が見えるとその場でとりあえず別れた。
家が見えたら俺だって自分で帰れるし。
「じゃあまたな。」
「うん、また明日」
ギギッと、格子の扉を開けて敷地内に入る。
次にあるのは、黒くて重い、黒バラの装飾が入った扉。
重くて、硬くて、冷たい取っ手を引く。
そして、俺は、「俺」と「僕」が入れ替わる玄関を、抜けた。
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