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「あ、あの。木下さん?」
「っ!」
俺が名前を呼べば、益々顔を上気させた木下さんに困惑する。
何でこんな表情になったのか分からないけど、さっきまでの不機嫌さは消えているみたいだ。
安堵でホッと息を吐けば、木下さんが顔を背けたまま視線だけで俺を見た。
「や……っべえ。今の、すっげーキた」
「え」
一人でブツブツと何かを呟きだした木下さんを、思わず訝しげに見てしまう。
木下さんの視線が少し熱っぽい気がして、無意識に俺の足が一歩後退する。
やっぱりこの人、何かがおかしい気がする。
「ごめん! 遅くなって」
突然割り込んできた姉貴の声に、石化の呪いを解かれたように我に返った。
微笑んだ姉貴の息は、珍しく走ってきたみたいで息切れをしている。
何で急いで戻ってきたんだとか聞きたい事は沢山あったけど、その言葉は呑み込んだ。
「……助かった」
「はあ? 何がよ」
「あ、ううん! なんでもない。それより俺、お昼買って来るね!」
「あ……」
逃げるように身を翻した瞬間、視界の隅で木下さんが何か言いたげに口を開いたけど、止まらなかった。
あの人とは絶対に関わらない方が身のためだ。
俺の頭の中で鳴り響く警鐘を疑うつもりは毛頭なかった。
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