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日課として、漆と運転手の牧原に今日学校であったことを伝える。二人とも、長く谷ヶ崎家に仕える使用人である。こくこくと頷いて、熱心に耳を傾けてくれる。
牧原を一言で表すなら、『細マッチョの優男』である。パッと見、俳優のように美しい面持ちだが、極度の車好きで、ことあるごとに運転手は天職だったと熱く語る。
リムジンに揺られて二十分後。遠目から、谷ヶ崎家である屋敷の門が見えてきた。
屋敷の門は黒々とした鉄製で出来ており、所々錆びた部分も相まって、外部の人間が入りにくい厳めしい雰囲気を醸し出していた。
二階建ての大きな屋敷は、2m以上あるレンガ造りの塀がぐるりと周りを取り囲んでいる。敷地の大きさ、塀の高さから近所で谷ヶ崎家を知らぬ人間はいない。大抵の者が、『大きなお屋敷』と訊くだけでこの家を紹介してくれるだろう。
門が開いて、リムジンが通される。ゆっくりとした速度で、リムジンは庭の中を通っていく。屋敷の表玄関前にリムジンが停車する。紅貴は車が停車した途端、待ってましたと言わんばかりに自分の執事の手を取り、力任せにぐいぐい引っ張って車を下りる。
「こっちに来い、こっちだ!!」
「…紅貴様。少々痛うございます。」
漆はちょっぴり眉根を寄せて牽制しようとするが、小さな主は聞き入れようとしない。
「今朝、いい場所を見つけたんだ!!お前も来い!!」
紅貴が執事を連れて来たのは、屋敷の東側、銀杏の木々が並ぶ場所だった。落ちた銀杏が地面で重なり合い、まるで黄色い絨毯のように広がっている。
「…なっ、うる!!こんなの見たことないだろう!!」
主人は誇らしげにそう言うと、くるりと後ろを向いて執事が止めるのも聞かずに背中から銀杏の絨毯にダイブした。
衝撃で、数枚の銀杏が宙を舞う。
「紅貴様っ!!」
流石の執事も、声を荒げた。しかし、銀杏の絨毯に寝っ転がる小さな主は、執事の狼狽を横目にケラケラと笑いだす。
「お前もやってみろ、うる!!ふわっふわの絨毯だ!!」
漆はしばらく強張った表情を続けていたが、やがてふっと目元を和ませ、肩を竦めてみせた。
「…ったく。あなたって人は…。」
観念したように呟くと、小さな主を見習い、後方を向くとやはり背中から絨毯に飛び込む。
紅貴の時と同じく銀杏が乱れ舞う。黄色い秋の絨毯に横たわり、二人して腹を抱えて笑う。
「本当ですね、紅貴様。ふわふわの絨毯だ。」
「そうだろう、そうだろう!!そぉ~れっ!!ごろごろぉ~。」
調子に乗った紅貴が右隣の執事の方に転がりだす。
「ちょ…っ、せっかくのお召し物が汚れてしまいますよ、紅貴様!!紅貴様!?」
嗜めていた執事だったが、右から小さな主にぐいぐい押され、嫌々ながら転がりだす。
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