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「うるだって、服を汚したからドーザイだ!!オレは悪くないぞ!!」
「…私は、あなたが横から押すので仕方なくですね…。」
「言い訳だ、言い訳!!そんなもの知るもんか!!」
言い合いながら、気づけば二人はまた笑いあっている。
少し離れた場所で、二人の様子を牧原が遠巻きに眺めていた。牧原は口元に微笑を刻みながら、二人が銀杏の絨毯で遊ぶのを飽きるまで長い間佇み続けていた。
日めくりカレンダーは、また捲られていく。木はすっかり葉が枯れ落ち、朽ちていく。十二月上旬。とある日の谷ヶ崎家は、朝から賑やかだった。
…紅貴の部屋を除いて、だが。
静かな部屋の中央で、小さな主と執事はすごろくをやっていた。執事がサイコロを転がす。出た目は『6』だ。六マス駒を進めて、執事が主より先にゴールした。
紅貴は唇を尖らせる。
「あ~っ、またうるの勝ちじゃん。もう一回!!」
「…いい加減にして下さい!!」
いつもは落ち着き払った様子の執事も、この時ばかりは疲弊していた。
「『もう一回、もう一回』って!!さっきから、テレビゲームだのすごろくだの…!!ゲームを始めてから三時間も経っているんですよ!?年末が近いですし、私には私のお仕事があります。紅貴様だって、来年の夏にはもう12歳です。次の春から、小学校六年生になるんですよ。いつまでもそうやって子供みたいに、駄々をこねないで下さい!!」
早口で一気に捲したてると、憤怒に身を任せるかの如く立ち上がる。自室の扉に駆け寄る執事に、慌てた紅貴は背後から抱きついた。
…二人の足が自然と止まった。
「…まっ、待って、うる。こ…っ、困らせたの、謝るから。」
「…紅貴様??」
執事が肩越しに振り向いたのが気配でわかる。でも、紅貴はとてもじゃないが顔を上げられなかった。自分から気になる人に抱き着いたのだ。今、顔を見られでもしたなら動揺を隠しきれなくなるだろう。
「だから、うる…。その、もっ、もうちょっとだけ…っ!!」
漆を抱きしめる腕に、知らず力がこもった…瞬間だった。
執事の目の前で扉が開かれ、中から使用人仲間…メイドである衣笠が飛び出てきた。
「あっ!?漆君!?ええっ、坊ちゃま、もしかしてバレちゃったんですか!?」
目を白黒させる漆の背後から、小さな主はぴょっこりと顔を出して反論する。
「ち…っ、違う!!バレてねぇよ!!こいつが仕事に戻ろうとしたのを引き留めただけで!!」
「薄々勘づかれているじゃないですか、坊ちゃまったらもう~っ!!」
やんややんややっている横で、執事は茫然と立ち尽くす。
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