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「衣笠さん…??次期当主に向かってなんて口の利き方を…。それより、これはどういうことです??バレるって一体…??」
頻りに首を捻りだす漆を見て、他二人は顔を見合わせるとニヤニヤと意地悪く笑いだす。
「…準備は出来ました。さあ、漆君、坊ちゃま、行きましょう。」
「そぉ~そっ!!このオレ様が直々に時間稼ぎしていたんだぞ、漆。光栄に思えよ♪」
口々に言いながら、二人して漆の背を押す。押されながらも、執事は困惑を隠せない。
「ふっ、二人して一体どうしたのです??…というか、紅貴様に足止めって。なんてことさせているんですか??」
「まあまあ、硬いこと言うなって。」
二人に連れられ、執事は一階のダイニングの扉前へと案内された。普段は紅貴の父親が主催で、パーティーなんかを開くところだ。目を輝かせた紅貴と衣笠にドアを開けるようジェスチャーを受け、渋々漆は従う。
「ったく、紅貴様はともかく衣笠さんまで…。一体、何の遊びです??」
漆が扉を開けた刹那、ダイニングからたくさんの人間の声がかかった。
「漆君、誕生日おめでとう!!」
クラッカーが次々に割れ、漆が好むクラッシックの明るいBGMと共に拍手の音が部屋中に響いていく。漆は面食らって…ようやく事態を理解した。これはサプライズパーティーだ。今日は十二月八日。源漆、十七歳の誕生日である。
部屋には、屋敷中の今時珍しい住み込みの使用人…衣笠含めメイド四名と料理人二名、漆の父親である執事が一人、運転手の牧原がいた。あとは外部から雇っている二名の庭師。いつも多忙なはずの紅貴の父親だ。みんなで考え、協力して会を企画してくれたのかと思うと、漆はその事実に胸がいっぱいになった。
三列の机が部屋の隅から隅まで続いている。純白のテーブルクロスの上に添えられているのは、どれも手の込んだ漆の大好物ばかりだ。今日のために料理人が腕を振るったのだろう。
中央のテーブルの真ん中に、大きな三段重ねのチョコレートケーキが用意されている。ケーキの種類がチョコレートなのは、漆が甘い物を得意としない所為か。
部屋の掃除やセッティングは漆の父親を筆頭にメイドら、力仕事は牧原あたりに力を貸してもらったのだろう。ダイニングのあちこちに目の保養となった見事な観葉植物や花は、庭師の者達が広い庭から力作を選抜してくれたに違いない。紅貴の父親は…日程を調整するのだけでも、忙しかったろうに。使用人とはいえ、漆はまだ子供である。わざわざ参加してくださったのだと思うだけで、漆の胸は熱くなった。
ただただ立ち尽くすしか出来ない漆に、駆け寄ってきたのは小さな主だった。こんな素敵なサプライズパーティー、言い出しっぺはこの屋敷一の悪戯っ子に違いない。漆は聞かずとも、誰の仕業なのかわかった。
「ほらほら、主役が棒立ちでどうすんだよ。はい、これ。」
胸に押し込まれたのは目にも鮮やかな花束である。庭師達が作ってくれたものだろう。
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