アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
22
-
…それでも、当主である燈が息子を褒めた試しなどなかったけれど。
鼻先でフッと笑い飛ばしてから、紅貴は手を肩の高さまで広げてみせた。
「…そもそも、αが何だっていうんだ。第三の性に胡坐かいて、何の努力もしないグズ共の集まりだろ。」
紅貴は辛辣な口調で言ってのけてから、身体を執事の方に向ける。
「…なあ、漆。お前とオレはβ同士だ。βの主人と執事で、偉そうなα共の面子をぶちのめしてやろうぜ!!」
「…紅貴様。」
口元を和らげて、執事はくすくすと笑ってみせた。
「その意気ですよ。」
「おう!!」
大きく頷いてみせる主人に、漆は冷たいグラスを手渡してやる。
「…ですが、その前にお体を崩されてはいけません。時には休むことも必要ではありませんか??」
「…そ、そうか。」
紅貴は幾分か気迫が削ぎ落とされたらしく、今度は渋々といった風にグラスを受け取る。
…刹那。
漆が鼻を僅かに動かして、顔を左右に動かす。麦茶を飲みながら、不思議そうに紅貴が執事の様子を眺めていると、相手は主人に一つ質問する。
「…紅貴様、近頃香水をお使いになられました??…あるいは、部屋にアロマキャンドルやフレグランス等を置いておられるなど…。」
紅貴は麦茶のグラスを勉強机に置いてから、首を傾げる。
「…いや??何もつけてはいないが。柔軟剤か何かの匂いじゃないか。」
「なるほど。」
そこで漆は不審な行動をやめ、主人に向き直る。
「ですが、私の記憶が正しければ紅貴様は柔軟剤を無香料のものと選んでいらっしゃったように思います。」
「うん。けどな、最近うちに新しく来たメイドがいただろ。ほら、あの…東とかいう。」
途端に、漆の背後でガラッと扉が開く。…続いて扉の向こうから二十代前後の眼鏡をかけたショートカットの女性がひょっこりと顔を出す。
「旦那様の書斎のお掃除に参りました~。…って、あれ??坊ちゃまがいらっしゃる??」
「お~、噂をすれば。東さん、おつかれ~。」
ぴらっと片手を頭上に掲げる主人に、メイドはそわそわしつつも会釈を返す。
「あ、はい、坊ちゃま。って、あれ??何で書斎に??っていうか、ん゛ん゛ッ!?漆さんも一緒…??」
半眼でぐるりと振り返る執事に、主人は微苦笑でことのなりゆきを見守ってやる。
_
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
22 / 120