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貝沢と呼ばれた男子生徒は口元を人差し指でポリポリと引っ掻いた。
「お前、相変わらずえげつねぇな。いつからそんな酷い性格だったわけ??」
紅貴の脳裏に一瞬だけ、夕焼けを背景にした病院が浮かんだ。が、頭を一振りして、ありし日の幻影を意識の外に追い出す。
「生まれてからずっとこんな感じだけど??…っつか、ルミの話を聞きに来たわけじゃなさそうじゃん。オレに何か用か??」
ううん、と貝沢は言って、ニヤリと意地悪く笑ってみせた。
「別に。…お前、面白いよって感想を伝えに。」
「…そらドーモ。」
棒読みで答えて片手を肩の高さまで掲げてから、紅貴は靴を履き、下駄箱の外へと向かっていく…。
高校の正門を抜けると、見慣れた車が道の端に横付けされている。鬱陶しい、と言わんばかりに短く息をついて…紅貴はおっと目を見開いた。
高校正門前の道路。街路樹が立ち並ぶ一角に、小さな男の子がいた。しゃがんで泣きじゃくる子供を見て、紅貴は…目を輝かせた。
冷静に男の子の周りを観察する。…どうやら親はいないらしい。友達も見当たらない。しめた、と内心ニヤついて、紅貴は木の根に蹲る男の子のそばに歩み寄っていく。
「…ん~??どうしたんだ、ボーズ??」
猫なで声で話しかけると、男の子は涙でぐしゃぐしゃの顔を上げ、あれ、と震える人差し指で示した。人差し指の先を視線で追うと、街路樹の内の一本、男の子では届かない位置に黄色い風船が一つ、引っかかっていた。…幸い、紅貴は背伸びすれば届きそうだ。
「そうかそうか。アレ取って欲しいのか。」
男の子はこくりと小さく頷いてから、泣きすぎたのだろう。枯れてすっかりしゃがれた声で、『お願いします』と言った。笑いを精一杯堪えながら、紅貴は風船の紐が絡まっていた木の梢から男の子の欲しい物を救出してやる。
「ほぉ~ら、見ろよ。お前が欲しい風船だぞ~??」
男の子に風船を差し出したところで、黒いリムジンがあった位置からバァンッと扉を閉める慌ただしい音がした。紅貴はニッと目を細める。
「あっ、ありがとうっ!!お兄ちゃ…っ」
言いかけた男の子の前で、紅貴は両手で素早く黄色い風船を挟み、万力を込める。すると、たちまち風船は割れてしまう。
風船の破裂音と、風船がなくなってしまったショックで数秒茫然としていた男の子は、我に返ると先ほどの倍大きな声で泣きだす。泣く男の子の前で、紅貴は腹を抱えてゲラゲラ笑う。
「やっぱガキを壊すのは楽しいわ!!…じゃあな、クソガキ。」
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