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「…申し訳ありません。」
「…本当だよ。あ~あ、オレは不幸だなぁっ!!こぉ~んな役立たずの執事を親から押し付けられてさぁ!!」
下唇を強く噛み締め、全身を震わせながら、執事は謝罪を続ける。
「…紅貴様、大変申し訳ありません。」
後続車のクラクションが聞こえてくるまで、主人は漆に謝罪を強要し続けた…。
午後七時。夕食の時間になり、漆が主人の部屋を訪ねた。すると、紅貴は天蓋ベッドの上に横たわり、両耳にイヤホンをはめ、音楽を聴いていた。爆音で聴いているのか、イヤホンから曲が漏れ出ている。しかも、ノリノリのロックで、漆にはやや耳慣れない。
「…紅貴様、夕食のお時間でございます。ダイニングにお越しください。」
紅貴はチラッと執事を見て、ちっと舌打ちを一つし、耳からイヤホンを力任せに引き抜いた。反抗的な態度に、漆は顔を顰める。執事は主人を嗜める。
「…紅貴様、次の誕生日は紗千香様との御婚約の日となります。それまでに、谷ヶ崎の名が穢れるような行為はお控えください。」
ベッドから離れた紅貴は執事を睨みつけ、眉根を寄せた。
「…あ゛あ゛!?婚約なんてドーセ、親同士が決めたことだろ。指輪と紙っぺらだけのお約束に、オレの行動が制限されてたまるかよ。」
「ですが、家同士がかわした、決め事です。世間の目もありますし…。」
紅貴は執事の傍に寄ってくる。…今や、主従の身長は逆転していた。そこまで背の高くない執事を、主人はギロリと見下げる。
「…いいのかよ、お前らの大事なあの遠瀬院とかいう女を、オレが壊しても。」
「…。」
一瞬にして、漆の顔面が蒼白に変わる。…漆は少し躊躇ってから、ワインレッドの絨毯へと膝をつき、両手を滑らせ、主の前で土下座した。
執事は声を振り絞って、悪の権化のような主人へと懇願する。
「…お願いします。遠瀬院様を傷つけるような真似は、決してなさらないで下さい。」
紅貴は満足げに小さく頷きを繰り返すと、上半身を前に突き出して、蹲る執事の前髪を片腕で握り、無理矢理仰のかせる。力尽くで動かされ漆は、う゛っ…と苦しげな声で呻いた。
執事は、恐怖と苦痛に苛まれ、顔を歪ませていた。紅貴はしげしげと執事の苦悩に満ちた表情を眺め、下唇をペロリと舐めあげる。
「…へぇ~。やればできんじゃん、そそる顔。」
「・ ・ ・。」
「お前はオレの言う通りにしてりゃいいんだよっ!!」
一声叫ぶと、紅貴は執事の頭を乱暴に放った。執事は床に手をつき、憂いに満ちた瞳で主を見つめ返す。が、紅貴は屈みこむ執事を無視して部屋を出ようとしていた。漆は、慌てて立ち上がろうと藻掻いた。
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