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「…??」
紅貴が不審に思って目を開け、バックミラー越しに運転席を確認すると…誰もいないように見える。
「…源??」
嫌な予感がして、シートベルトを外す。空の運転席を覗き込むと…視界の隅にサイドミラーが映った。…鏡には、車の扉の外でアスファルトの地面にへたり込み、忙しない呼吸を繰り返す執事の姿がある。
「源ッ!!」
短く叫んで、主人は急いで車の外に転がり出る。車の後方から回り込んで、苦しげに息をする執事の薄い両肩に手を置く。
「…紅貴、様…。申し訳、ありません…!!」
途切れ途切れに呟く執事に、主人は辺りを見回しながら怒鳴り返した。
「馬鹿野郎!!…そんな状態で謝るなよ!!…どっ、どうしよう。またヒート関係の体調不良か??…オレ、βだから薬とか持ってねぇし、対処法もわっかんねぇ~よ!!」
目に見えてオロオロする主人に、漆は目を伏せ、長い睫毛を不安げに揺らした。
「いいえ…。私の体調管理が甘かったのです…っ。本当に申し訳…。」
「だから、謝るなって!!…なっ、何をどうするべきかわかんねぇ…。と、とりあえず救急車…っ」
スーツのポケットから携帯を取り出して、操作しようとしたその腕を止める別の手が伸びてきた。
「だめ…っ」
喉から振り絞るように、漆はか細い声をあげる。
「お願い、だから…っ!!救急車は呼ばない、で…っ!!」
紅貴も必死の形相で従者を見る。
「…っじゃあ、どうすればいいんだよ!!」
「…じき、収まるんだ。…僕を運転席に座らせて、休ませてもらえないか??」
「本当かよ…。」
本音を漏らしながらも、紅貴は指示された通り、執事を運転席に座らせる。運転席の扉を開けっ放しにしたまま、傍らに跪いて相手の様子を観察する。…ゆっくりと時間をかけてではあるが、漆の呼吸は穏やかなリズムを取り戻していった。
「…病院は。」
ぶっきらぼうながら従者の身を心配する主人に、執事は微苦笑を浮かべる。
「…まだ、行けていません。」
「~っお前なぁ!!」
叱責しようと開いた主人の唇にさっと拳から一本出した人差し指を押し付けて、漆は手慣れた仕草で紅貴の口を封じた。
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