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「なお悪いじゃないですか。」
主従は顔を見合わせ…少ししてから、どちらともなくくすくすと笑いだす。
「…で、どうだったんだ、内容は??」
「面白かったですよ。…ちょうどお腹もすきましたし、昼食がてらお話しましょうか。」
「あぁ、いいな!!」
紅貴が笑う。主人の笑みに釣られるように、執事も控えめながら微笑む。
紅貴はちらっと考える。
…この時間がもっとずっと続けばいいのに。
「…栄養のバランスがなっていません。」
一口ハンバーガーに噛り付いて、仏頂面になった執事に主人はたはは…と微苦笑を隠しきれなかった。
場所はフードコート。紅貴が生まれてからずっとかかりっきりだった執事は、フードコートすらよく知らなかった。紅貴が高校の友達と行った時も、執事はボディーガードを兼任していたものだから、出入口で屋台に近い形の店を背にして待機しているだけだった。
だから、漆が口にした経験の少ないだろうハンバーガーショップを主人は昼食に選んだ。が、選んだ結果が漆の渋面だった。
「第一、盛り付けからしてなっていません。見た目で食欲がわきません。」
淡々とトレイの上の包装紙に包まれたハンバーガーにダメ出しする執事を横目に、紅貴は知らんぷりして注文したハンバーガーの包装紙を粗方剥がしてからかぶりつく。濃い味付けにジャンク感たっぷりのこの味。…たまには悪くない。
紅貴が二口目に挑む時にも、まだ執事はこんこんと料理相手に説教を唱えていた。
「それから、素材本来のうまみが活かされていません。よりよい美味しさを追求すれば、必然と素材の良さを活かすべきです。例えば、トマトは赤い色どりを添えるだけではなく、酸味・甘みがあり~…。」
人差し指をピンと立て、トレイの上の一口味見されたハンバーガーに切々と料理とは何たるかを説いている。…店に直接乗り込まないところを見ると、まだ良心的なクレーマーか。いや、そもそもクレーマーに良心的も何もないのでは…??、静かに考えに耽りだす紅貴だった。まあいいか、が帰結になったところで、ハンバーガーを食べ終え、割と庶民派感覚の主人は指についたソースをぺろりと舐めていく。…執事の注目がそれたのをいいことに。
「…っていうかさ。さっきの映画の内容、聞かせてもらっていいか??」
「…~であるからして、御屋敷の料理人さんが作ったまかないの方がよっぽど味に優れて…って、え??紅貴様、今なんて仰いました??」
主人の言葉に説教を遮られた執事のピンと伸びていた人差し指がへにゃりと情けなく曲がる。
「だぁ~から、さっきの映画の内容だって。」
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