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紅貴はやけを起こし、執事をベッドに押し倒す。胸襟を掴み上げたまま馬乗りになり、力尽くで持ち上げた相手の上半身に向かって怒鳴り散らす。
「黙れ黙れ黙れ…っ!!お前なんか、主人にもなれない器の癖に!!…いいよなぁ、生まれついての凡人は!!執事の家に生まれて、執事として一生を終えればいい男は!!生まれた時から、成功に繋がるレールが敷かれている!!そこを真っ直ぐ突き進めばいいだけだもんなぁ!!」
「…に何がわかる??」
執事があげたか細い声は、主人の恫喝にかき消されていった。
「お前にとってのオレって何だ??執事にとっての主人って??…ええ??オレがαじゃないって知って、本心じゃビックリしたよな??小物に仕える執事の気分はどうだよ??なあ??…お前にとっちゃ、どうせオレなんて十八代目当主の看板をきちんと持たせて子作りさせて世継ぎが出来ればはいそれまでの存在だもんなぁ!?」
「あなたに何がわかるッ!??」
執事渾身の叫びと共に、紅貴の視界は逆転する。…漆が、主人を掴んで押し倒し、立場が逆転したのだと気づいたのは、しばらくしてからだった。体勢からマウントをとった執事は、血を吐くように主人へと告げた。
「…私はあなたが好きなんですよ…っ」
一瞬にして、部屋の空気が変わった。執事は天を仰ぎ、頭を抱え、苦悩に悶えるかの如く上半身を左右に激しく揺らした。
「あなたに何がわかるというんです??…あなたが生まれてからこの16年、一時たりとも忘れられなかったのに。」
執事はふっとベッドに横たわる主人の肢体に目を向け、頬から首へ首から胸元へとそろそろと手のひらで触れていく。…さっきまで従順だった執事の生々しい手つきと猛禽類が獲物を見るような眼差しに主人はごくりと生唾を飲み込む。
「抱きたい、犯したい、抵抗するのを無理矢理私のものにして一生部屋に閉じ込めておきたい…っ!!」
二人っきりの室内。夜の帳が落ちた後で、獣の咆哮は部屋中に谺する。
「あの女のことだってそうですよ。ッは、何が遠瀬院家だ。あなたがあの女の尻軽な身体に触る度、何度頭の中であの女を亡き者にする妄想を愉しんだか。あなたと何度も乗ったあの私の車で轢殺したか。あなたがあの女の手を握る度、あなたを抱きしめたこの手で何度絞殺したか。数え始めたらキリがありませんね。…本当にあなたは愚かですよ。レンガを落としたのが私??あなたを攻撃するなんてありえませんし、あの女を手にかけるなら、レンガを落とすなんて甘っちょろい真似するもんか。本気で殺しにいきますよ。」
部屋の壁に折り重なった二つの影。視界の隅で、主人は静かに確認する。上に乗っかった執事は、まるで空腹に苛まれ身悶える獣の如く見えた。
「…なのに、あなたは。」
獣はツー…と右目から一滴の涙を流し、強張りきった表情で無理に笑ってみせた。
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