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そうか、と呟いた主人は、姿勢を改めてから執事の名を呼ぶ。
「…源、今その場で跪け。」
「は、はあ…。」
訝しげにしながらも、漆は天蓋ベッドの枕元で膝をついてみせた。…一方で、紅貴はベッドの淵に座って、執事の頭上から彼を見下ろす。
「…タイ、緩めろよ。」
紅貴の頭にこびりついて離れない映像。三日前、婚約会場に行く前に見た、漆の首筋。ねっとりと残ったキスマークがどうしようもなく許せなかった。…今回は印が残っていないか、新しいのがないか確認したかった。ずっと漆の首筋が気になって、ここ数日の主人はとりかかっている物事に手がつかないくらいだった。
「えっ??」
目を剥く漆に、まぁたなんか誤解してんな、と心を読みながら主人は再び命じた。
「…だから、タイ、緩めてみろよ。いいだろ、男同士なんだし。恥ずかしがるなよ。」
「…はい。」
漆はじんわりと頬を桜色に染め、震える指先を伸ばしてタイを緩めていく。燕尾服の胸襟と首筋の僅かな間を目を細めてじっと眺める。
瑞々しくも張りのある漆の肌に、キスマークは見受けられなかった。ほっと安堵した、矢先だった。
「し、失礼します…っ。」
「・ ・ ・。」
執事の手によって両目を覆われ、紅貴は無言になる。黙ったままの主人に言い訳するように、執事は細い声をあげた。
「そ…っ、そんなに見たら穴が開くだろ…っ!!」
「開かねぇよ。」
言い返しながら、視界を奪われた紅貴はやれやれと首を竦める。幼い頃から叩き込まれた執事の性分ゆえか、何故だか漆は、主人に見つめられるとすぐ恥ずかしがった。…普段はポーカーフェイスの年上の男が恥じ入る姿がまた、格別愛らしくて仕方ないのに本人は気づいていないらしい。
「…ってことで、明日からお前はまたオレの執事だから。わかったか??」
っつか手ェ外せ、と文句を言いつつ、主人は自分から漆の手を退かせた。漆は慌てて謝る。
「もっ、申し訳ありません、紅貴様。…あ、明日から執事業に戻る件はかしこまりました。」
ペコペコと繰り返し頭を下げる執事に、主人は何故だかイラッと来て…閃いた。
「…源、こっち来い。」
人差し指でくいくいと自分の近くにやって来させると、意地悪な笑みを浮かべた主人はグイと勢い任せに執事のタイを引っ張った。
「わ…っ!!」
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