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『だけど…それって何か…窮屈じゃないか??お前ばっかり我慢しているじゃないか。本当にお前は、源さんが傍にいるってだけで幸せだと思えるのか??』
あと一つ、と前置いて貝沢は続ける。
『…源さんの気持ち、お前はきちんと確認しているのかよ??主人がそうやってしたくもない我慢して、自分の傍に居続けるのが最良の結果だって思ってんのか??第一に、源さんはお前の気持ちを知っているのか??』
「い、言ってない…。」
『なら、まずそこからじゃねぇのかよ。…一人で突っ走って決めつけてどうする??』
貝沢に言われた、直後だった。紅貴の部屋の扉が大きく開け放たれ、中から血相変えた衣笠が飛び出してくる。
「大変です、坊ちゃま…!!漆君が…っ!!」
「源が…!??」
血相を変え、席から立ち上がった紅貴の耳元でやや遅れて声がする。
『あ~…、なんかそっち相談どころじゃなさそうだな。一端切るわ。んじゃ、またガッコで。』
電話が切れる。携帯を耳から離した後で、紅貴は衣笠に向き直った。…察した衣笠は早口に捲し立てる。
「今、病院から連絡があって。この近くの道で、漆君が倒れているのを近隣の人に発見されたそうです。その後、発見した人が救急車を呼んで、今病院にいるらしいです。命に別状はなく、本人の意識が戻って、本人から御屋敷の連絡先を聞いたそうなんですが…。」
不安げに眉を寄せる衣笠に対し、次期当主は力強く頷いてみせた。
「…今すぐ病院に向かおう。牧原、いるよな??車を出してもらえないか頼んでみてくれないか??」
「はい!!」
衣笠は姿勢を正し、はっきりとした返事を口にした…。
「…倒れた原因は軽度の熱中症ですね。」
そこはかとなく香る薬品の匂い。白い床、壁、天井…。ベッドからサイドテーブル、窓にかかるカーテンまで…白を基調とした空間に身を置いた紅貴は何となくそわそわしてしまう。
15歳の誕生日。漆の裏切りに気づいてしまった場所にいるのは、やはり若干の抵抗がある。
個室のベッドに横たわる漆は、薄緑色の病衣を身に纏い、格好のためか少し痩せこけて見えた。頭を垂れ、物静かに医者の言葉へと耳を傾けている。
「源さんの話によると、少し前に体調を崩していた節があったそうですから、それが熱中症の引き金になったのではないでしょうか。」
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