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「…来るに決まっているだろ。心配かけさせやがって。」
「…すいません。」
「だから、謝るなって…。」
二人の会話はどこかぎこちなく、すぐに沈黙が部屋を支配してしまった。姿勢を正して、紅貴は空咳を一つする。
「…ところでお前さ、何か悩み事があるんじゃないか??」
瞬間、二人の視線が絡み合う。…ふいと顔を逸らしたのは、主人が先だった。執事は、どうしてわかったのか、とでも言いたげな表情をしている。
「お前がオレを信頼してないのはわかっている。…それは個人の自由だと思う。」
けどさ、と紅貴は落ち着きなく部屋を見渡す。
「こうして、体調を崩したり命に関わることがあると流石に目こぼし出来なくなる。」
つまりさ、と紅貴は言いかけて、吐息を一つつく。
「…つまり、だ。オレは今回のお前の体調悪化について、見過ごせない。」
目を合わせて、紅貴は従者に言い聞かせる。
「悩み事があるのなら、オレに命令される前に自分から言ってくれ。オレだって…その、幾ら主人だからってお前のプライベートな部分にまで首を突っ込みたくはないんだ。」
やや考えてから、漆は唇を僅かに動かした。
「…呪いが、かかっているんです。」
えっ、と紅貴は顔を従者に向ける。従者は、静かに言った。
「私には、一生解けない呪いがかかっているんです。」
だから、と執事は続ける。
「私は、絶対に幸せになれないんです。」
紅貴の瞳が、ほんの少し見開かれる。
…思い出す。
11歳の冬休み。執事と話した、サンタへするお願い。
『…なぁ~、うるはサンタさんに何お願いするんだ??』
『よい成績をおさめ、よい仕事につき、よい異性を見つけて結婚し…幸せになることです。』
幸せになりたい、と幼い頃の執事は語っていた。…ひょっとして、その頃から執事は呪いの存在を自覚していたのだろうか。だから、あんなどこか達観したような願いを口にしたのか。
「…これ以上、私の口から聞き出したいのであれば、命令して下さい。」
執事はそう言って、そっと片手で唇を覆った。恥じ入るようにほんのちょっぴり俯く様に、主人は思わずドキリとする。
「…わかった。」
主人は執事の片手を両手で包み、視線を合わせて熱を込めて喋る。
「お前の“呪い”は、オレが絶対に解いてやるから。」
「…それはっ」
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