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「αの人が言う“呪い”…。それも、“一生解けない呪い”って、何か覚えあったりする??こう…身体に異常が出るような、心因性ストレスに通じるもので。」
『心因性のストレス、ですか…。』
ややしてから、遠瀬院は訥々と語りだす。
『αに限って言えば、真っ先に思いつくのはやはり“種の繁栄”でしょうか??α性はΩ性ほどではないにしろ、数が限られていますから。加えて、秀でた才能を多く持つ者が多い。α同士の結婚を夢見る両親は…うちも含め、大勢いるでしょうね。』
使用人に恋をしたαの令嬢は、物悲しげに締め括った。
『ですから、一般的にもαには結婚のプレッシャーがそれなりにかけられていると思います。』
「プレッシャー、ですか…。」
βの紅貴にも物覚えがあった。家を支える立派なαになれと、両親は息子に口酸っぱく言い聞かせてきた。賢いαの令嬢は、紅貴の気持ちに察してか。喋りだす。
『これはうちの黒岩も言っていましたが、人には気持ちが…心があります。子を作り産むだけの存在ではありません。はやく、こんな古いならわしに縛られなくて済む世界になればいいと思いますが…種の存続は簡単な問題ではないので、難しいですね。』
「そう、ですね…。」
それから紅貴はお礼を告げ、電話を切る。携帯を机の上に置いてから、紅貴は再び腕を組んで考えだす。
『私には、一生解けない呪いがかかっているんです。…だから、私は、絶対に幸せになれないんです。』
執事の言っていた“呪い”が種の繁栄なのだとしたら、と考えかけて、紅貴は顔を顰めた。…待てよ、と思うのだ。
11歳のクリスマスイブ。サンタへの願いを訊かれ、漆はこう答えている。
『よい成績をおさめ、よい仕事につき、よい異性を見つけて結婚し…幸せになることです。』
結婚して幸せになる=子供を授かり育てる、というのは少々飛躍しているのかもしれない。が、この言葉は種の繁栄を呪いと喋った人間と同一だとは思いづらい。見合いを拒んでいたところからして、今の漆は結婚を忌み嫌って見える。…当時は11歳だったから、まだ呪いの存在に気づいていなかった、という見方も出来るが…何か矛盾が生じているように思う。
第一、“種の繁栄”を“呪い”と呼ぶ漆の気持ちはどうも不可解だ。理由がすっかり抜け落ちているように見える。
それに、と漆は机に突っ伏して、ぷくぅっと膨れっ面になる。…一方で主人の婚約活動を後押ししていた癖に、自分は結婚したがらないというのは素直な漆らしくないワガママに受け取れた。
「・ ・ ・あ~もうっ、面倒くせぇッ!!」
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