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紅貴は慌てて床に屈みこんで、DVDを集めにかかる。
「…け、ケースが割れたような音はしていなかったから、中身も多分大丈夫だろ!!」
東はぷしゅうと音を立てそうなくらいの勢いで床にへたり込んでしまう。
「うぅ…。私の、“何もないところで転んでしまう”という特技が…。」
「と、特技か、それ??」
欠点の間違いではないか、と思う紅貴だった。
音を聞きつけてか。階段を上がってきた衣笠が途中で加勢に入ってくれる。三人で何とかDVDを元の状態に戻す…寸前だった。手にしたDVDのカバーに書かれた文章を見て、紅貴が頭を斜めに倒した。
「…『紅貴1』??」
ああ、と衣笠が短く声を上げる。彼女の声に連鎖反応を起こしたかの如く、東が詳しく話し出した。
「…そのDVDは、元々は旦那様の自室にあったものです。自室の荷物が多くなってきたので、一部を寝室に移せと旦那様から命じられまして。」
「オレの名前、書いてあるけど、このDVDってひょっとして…。」
ロクな物じゃない気がしながらも、紅貴は聞かずにはいられない。はい、と東は朗らかに返事をしてみせた。
「ホームビデオです。坊ちゃまの成長記録ですね。」
「へ、へぇ…。」
無意識に顔面を引き攣らせつつ、紅貴は手元のDVDをしげしげと眺める。紅貴が0歳の頃、そこまで考えて、彼はパッと顔を上げた。
「…じゃ、じゃあ、ここには小さい頃の漆も映っているのか??」
目を爛々と輝かせる六つ下の主人だった。
「漆君ですか??もちろんですよ。」
「小さい漆さんですか~??今じゃ想像できませんね~。」
「あはは。東さんは大きくなった漆君しか知らないものね。愛らしかったわよ~??」
メイド達は口々に喋っているが、ぶっちゃけ紅貴はそれどころではない。好きな人の自分が知らない頃の卒業アルバムを手にしたかのような高揚感に包まれていた。
「こっ、これ見ていい??」
返事を聞く前から、両腕に大事そうにDVDを抱える紅貴に衣笠が微苦笑気味に答えてやる。
「…まあ、被写体がそう仰っているなら自由にしていいと思いますよ??ああでも、見終わったら東さんに返してあげて下さいね。…いいかしら、東さん。」
「はい。そのくらいならお安い御用ですよ。」
「ありがとう!!」
早速ノートパソコンを置いてある自室に戻ろうとして…紅貴は足を止める。くるりとメイド二人を振り返って、紅貴は執事へ持っていた疑問の一つを訊ねてみる。
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