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プロローグ2
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「外は暑いけど、この中は快適だね」
馬車の中に顔を引っ込めた少年はそう言って、膝の上に乗っているトカゲを撫でた。こくこくと頷きを返してから手に擦り寄ってきたトカゲに、自然と少年の表情も和らぐ。
砂漠地帯の多いリィンスタットは、昼夜の寒暖差が激しく、今のような日中は灼熱の暑さで、夜になると凍えるような寒さが襲ってくる国だ。だがこの幌馬車の中は、気温、湿度共に実に快適な状態が保たれている。これは、偏にこの馬車に置いてある魔術器のお陰であった。黄の国に行くのならばと、金の王が用意してくれたのだ。
どうやら、長旅になる都合上あまり大きな金属器は持っていけないだろうと、王自らがわざわざ新しく作ってくれた小型の魔術器らしい。たった数日でそれを作ってしまうあたり、さすがは錬金術国家の王といったところか。
なんにせよ、その魔術器によってこの馬車内の環境は非常に安定しており、慣れない長旅に挑んでいる少年には大変有難いことだった。
ちなみに、実は服装の方も普段着とはかなり違っている。ぱっと見は大差ないのだが、衣服の素材がまったく異なっていて、風通しが良くて軽い布でできているのだ。首に巻いているのも、マフラーではなくストールである。
例にもよって例の如く、これらはすべて赤の王から贈られたものだった。かの王が、砂漠地帯向けの衣服やら装備やらを一切持っていない少年のためにと言って、止める間もなく買い揃えてしまったのだ。さすがに何もかも貰うのは申し訳ないし嫌だと思った少年だったが、案の定人の話を聞かない王に押し切られてしまったので、結局全て貰う羽目になってしまった。
「……そもそも、なんでこんなことに……」
いや、理由は知っている。帝国に狙われている自分をどうすべきかという議題に対し、円卓会議で国王たちが出した結論がこれだったからだ。
黄の国リィンスタットにて、エインストラを庇護する。
経緯は全く知らないが、先日行われた円卓会議ではそう決定したらしい。なんだってそんな遠くの国で守られなければいけないのかは判らなかったが、いち庶民でしかない少年には、円卓会議での決定に逆らうことなどできない。
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