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プロローグ3
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(知らない人のところに行くなんて、気が重いなぁ……)
気分が鉛のように沈み込み、少年は小さな溜息を吐き出した。だが、今更そんなことを思っても仕方がない。とにかく、少年は大人しくこの馬車に揺られ、リィンスタット王が待つ王宮へ向かわなければならないのである。
もう一度大きなため息を吐き出した少年の手に、トカゲが身体を擦り付けてくる。恐らく、励ましているつもりなのだろう。
「ふふ、ありがとう、ティアくん」
トカゲにしては温かな鱗を撫でてから、少年は再び覗き窓から外を見た。
「これ、ちゃんと王都へ向かえてるのかな……」
見渡す限り砂丘が広がっているので、今現在どこにいるのかすら判らない。かろうじて太陽の位置から大雑把な方角くらいは把握できるが、それだけだ。
やや不安そうな顔をした少年を見上げたトカゲが、こてんと首を傾げる。次いで彼は、少年の膝の上から跳び下りると、そのまま馬車の前方、御者の席がある場所へと這い出ていってしまった。だが、少年に驚く様子はない。もちろん初めの一回目は驚いたし慌てたのだが、もうすっかり慣れてしまったのだ。
前方に備え付けられている小窓からそっと外を窺えば、トカゲがモファロンの背中に乗って、その背をぺちぺちと叩いているのが見えた。すると、モファロンが大きくひと声鳴く。
恐らく、会話をしているのだ。果たしてそれが会話と呼べる種類のものなのかは判らないが、モファロンがトカゲの指示に従っているのは確かである。食事のために馬車を止めるときも、休憩を終えて再出発するときも、モファロンの背中を叩いて促すのはトカゲの役目だった。
(あの人の言った通りだな……)
――炎獄蜥蜴《バルグジート》が相手ならば大抵の獣が従うから、わざわざ御者を雇う必要はない。他人と何日も一緒では、お前の気が休まらないだろう?
そう言ってくれたのは、赤の王だった。お陰で御者を雇うことなく快適な旅を続けさせて貰っている。大変有難い配慮だったが、どうしてあの王はそれを普段も発揮できないのだろうか。
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