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プロローグ4
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そんなことを考えていると、馬車の中へと戻ってきたトカゲが少年を見上げた。そして、その場で円を描くように歩いて見せる。どうやら、旅路は順調なようだ。
「ありがとう」
微笑んで小さな頭を撫でてやれば、トカゲは嬉しそうに身体を摺り寄せてから、少年の膝の上によじ登ってきた。そして、そこで丸くなって大きな欠伸をする。
「眠いの? 寝ちゃっても良いよ?」
ゆるりゆるりと背中を撫でてやれば、トカゲの目がとろりと微睡むように細められる。そのまま瞼が下ろされ、彼が眠りに落ちようとしたそのとき。
不意にモファロンが悲鳴じみた咆哮を上げ、馬車が大きく揺れた。
「な、なに……!?」
少年が驚きの声を上げたのと同時に、膝の上のトカゲがだっと駆け出す。そして、小さな身体は幌の隙間を抜け、外へと飛び出した。
「ティアくん!?」
突然飛び出てしまったトカゲに、少年が慌てて覗き窓から顔を出す。そして彼は、そこに広がっていた光景に息を呑んだ。
砂漠表面を食い破るようにして、とてつもなく巨大なチューブ状の何かが生えていたのだ。一瞬何が起こったのか判らなかった少年だったが、すぐに理解する。
(砂蟲《サンドワーム》!?)
金の国で見せられた図鑑でしか知らないが、恐らくあれは、砂漠地帯の地下深くに住んでいるという砂蟲だ。滅多に地上へは出てこないとされる生き物のはずだが、どうやら非常に間が悪かったようである。
今の時期は初春。初夏に訪れるリィンスタットの雨季の直前と言っても良いこの時期の砂蟲は、非常に獰猛である。雨季に貯め込んだ水分が失われ始める頃で、気が立っているのだ。故に、獲物を見つけたならばすぐさま食らいつき、その体液を啜り切るまで放さない。
その知識を一週間ほど前に叩きこまれていた少年は、すぐさまこの場から逃げなければと、モファロンの背に乗っているトカゲを見た。少年ではモファロンに指示が出せない。逃げるためには、トカゲの協力が必要だ。
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