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プロローグ6
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一方のトカゲはというと、風に舞う灰を一瞥してから、もう一度だけ小さく火を吐いた。口に留まっていた残り火を吐き出すような、そんな印象を受ける動作だった。それからモファロンを数度叩いた彼は、するすると少年が顔を出している窓へとやってきた。そんなトカゲを見て、少年がようやく思い出したように声を出す。
「……あ、ありがとう。……ティアくんって、とっても強いんだね……」
その言葉に、トカゲは得意げに胸を張ってふんすと鼻息を出した。どうやら褒められたのが嬉しかったらしい。それから、いつまで経っても窓から顔を引っ込めようとしない少年を見て、こてんと首を傾げる。
「……ああ、うん……」
そうだね、暑いもんね、と呟いて馬車の中に身を引っ込めた少年に続いて、トカゲもするんと入ってくる。そのまま椅子に座った少年の足元まで来たトカゲは、後脚だけで立ち上がって少年を見つめ、こてん、こてん、と二度首を傾げた。
その所作の意味するところをなんとなく察した少年が、トカゲの方へとそっと手を伸ばす。
「おいで、ティアくん。お昼寝の続き、しよっか」
そう言って控えめに微笑んだ少年に、トカゲは嬉しそうにぴょんと跳んでみせた。そしてそのまま、倒れ込むようにして少年の掌に抱きつく。小さな手にぎゅっとしがみつかれて、少年はふふっと笑った。
炎獄蜥蜴《バルグジート》であるティアの体温はとても高い。掌に直に伝わるその温もりを優しく撫でつつ、少年はトカゲを膝の上に置いた。そうすれば、くありと大きく欠伸をしたトカゲが、居心地の良い場所を選んでくるんと身を丸める。
「今度こそゆっくり寝てね。おやすみ、ティアくん」
少年の言葉に応えるように、瞼を閉じたトカゲがその頬を少年の掌にすりつけた。そんな愛らしい様子にやはり小さく笑ってから、少年がトカゲを撫でる。優しく労るようなその手付きが心地良かったのか、護衛としての仕事をこなしたトカゲは、すぐにすよすよと寝息を立て始めるのだった。
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