アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
円卓会議12
-
「帝国側の戦力とか計画とかを探ろうと思ったから、手っ取り早いと思って帝都の城に行ったんだ。侵入自体は簡単だったし、情報ついでに殺せそうな主要戦力を削っておこうかなって思ったんだけど、主力連中はどれもこれも殺しにくそうだったから諦めた。というか、主力の人間は殺せるけど、魔導契約してる魔物に気づかれずにやるのが難しそうだったんだよね。ヴェルに任せればできると思うけど、あれやると俺は数日動けなくなるし、今そこまで無理する必要ないかなって。で、じゃあ暫く滞在して様子見てれば良いかなぁって思ってたところで、あれに会った」
「ウロ、という人物のことですね?」
確認のためにそう言った白の王だったが、黒の王が露骨に嫌そうな顔をした。
「そうだけど、あれを人みたいに呼ぶのやめてよ」
「けれど、人の姿をしていたのでしょう?」
「姿だけはね。でも中身はまるで違うよ。あんなのが存在してるなんて、何かの間違いだと思いたくなる」
ぎゅうっと顔をしかめた黒の王に、白の王が静かに言葉を紡ぐ。
「貴方がそこまで言うということは、本当にとても危険な存在なのでしょう。では、それを見たとき、貴方は具体的に何を感じましたか?」
これこそが、王たちが黒の王に問いたいことだった。リアンジュナイル大陸一の諜報役である黒の王の索敵能力や危機察知能力は、通常の人間を遥かに凌ぐどころか、野生の獣のそれを上回りさえする。その彼が下す判断は恐らく最も信頼でき、それこそが彼を帝国に潜り込ませた理由でもあった。
こうして根気よく話を聞かなければ有用な情報を引き出せないのは難点だが、それを補って余りあるほどに当代の黒の王の能力は優れている。
少しの間、思い出したくなさそうな嫌な顔をしていた黒の王だったが、さすがの彼も言わざるを得ないと思ったのか、溜息と共に口を開いた。
「あれを見たのは、帝国の皇帝を探ろうとしたとき。皇帝が俺の視界に入ったのと同時に、皇帝の横にいたあれが、こっちを見て笑ったんだ。で、俺はその瞬間に死んだと思った」
淡々と言った黒の王に、何人かの王が小さく息を呑む音がした。あの黒の王が、目が合った瞬間に死を悟るなど。そんなことは前代未聞である。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
18 / 197