アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
円卓会議13
-
「あとのことはよく覚えてない。ただ、一刻も早く逃げなきゃ殺されると思って帝国領土を飛び出てきた。寝食忘れて走りっぱなしだったから、すごく疲れた」
これで良いかと周囲を見回した黒の王に、橙の王が唸る。
「ヴェールゴール王がそのざまとなると、儂らも似たようなものか……」
「だから言ったじゃん。あれ、多分人間にどうこうできる生き物じゃないから、何しても無駄だって。あれがエインストラを攫おうと思ったら俺たちに止めることなんてできないよ。あ、でも、だからといってエインストラを殺すってのもなしね。エインストラが本当に必要なんだったら、どうせあれが殺させないだろうから、余計面倒なことになりそうだもん」
それを聞いた銀の王が、片眉を上げて黒の王を見た。
「その言いざまは聞き覚えがある。グランデル王がドラゴンを表現する際に用いた言葉に非常に類似しているように思えるが、よもやお主の見たそれがドラゴンに並ぶ脅威であると、そう申すか」
問いを受け、黒の王が赤の王を見た。
「俺はドラゴンに会ったことないけど、ドラゴンって存在を疑っちゃうくらいやばい生き物?」
「……いや。確かに我々人間からすれば脅威的な存在だが、少なくとも、目が合っただけで臨死体験のようなものをするほどの相手ではない。尤も、私が出会ったときは向こうに敵意がなかったからそうだっただけやもしれんが……」
「あ、じゃあ多分あれの方がやばいや。あれも別に敵意なんてなかったもん。ただこっち見て笑っただけ」
あっさりと言った黒の王に、銀の王が黙り込む。他の王も同様に、発するべき言葉を探しあぐねているようだった。
だが、その嫌な沈黙を黒の王の呆れた声が破った。
「暗くなってる暇なんてないでしょ。確かに俺たちは絶対あれには勝てないけど、それでも勝たなきゃならないんだから。判ったらさっさとどうすれば良いか考えてよ。俺そういうの考えるの苦手なんだから」
馬鹿だな、と言わんばかりの口調に、一瞬の沈黙のあと、銀の王がじろりと黒の王を睨んだ。
「お主に言われずとも、思考しておるところだ」
銀の王はそう言ったが、黒の王の言葉をきっかけに、やや強張っていた王たちの表情が少しだけ和らいだのは事実だった。黒の王はあまり難しいことを考えないで発言する人物だったが、今回はそれが、場に流れていた嫌な空気を変えることに繋がったようだ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
19 / 197