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砂漠の色男3
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衛兵たちの鮮やかな対処に感心しつつ歩を進めていると、不意に地面が大きく揺れた。その衝撃で転びそうになった少年が、寸でのところでモファロンにしがみつく。
「地震……?」
少年がそう呟くのと、先程よりもずっと悲愴な悲鳴が辺りに響き渡るのと、どちらが早かっただろうか。
新たに上がった悲鳴に再度振り返った少年が門の外に捉えたのは、砂蟲の群れを蹴散らすようにして現れた巨大な甲殻生物であった。それを見た人々は勿論、衛兵たちまでもが顔色を変えて息を飲む。
ザナブルム。前肢に巨大な鋏、尻に三本の巨大な尾を持つ、砂漠生態系における上位種である。
途端、先程まで暴れていた砂蟲たちが一斉に砂中へと潜り始めた。砂蟲にとって、捕食者であるザナブルムは脅威なのだ。だがそんな中、その内の一頭をザナブルムの鋏が捉えた。巨大な刃が砂蟲の硬く分厚い皮膚を裂き、その身体を切断する。嫌な音を立てて千切られた身体は、何度かびくびくと震えた後で、動かなくなった。そしてそんな砂蟲の死体に、ザナブルムが喰らいついた。ぱかりと四つに割れた大きな口が、柔らかな肉が覗く切断面を貪る。
見ているだけで気分が悪くなるような光景だったが、幸運なことに今のところザナブルムは砂蟲にしか興味がないようで、周囲にいた衛兵や馬車に危害が及ぶ様子はないように見受けられた。
ほっとして自分も避難を続けようとした少年はしかし、食事中のザナブルムのすぐ後ろに馬車が横転しているのを見つけてしまった。はっとして目を凝らせば、倒れた馬車の中で何かがもぞりと動いたのが見えた気がして、彼は小さく息を呑んだ。
(中に、まだ人がいるんだ……)
恐らく、ザナブルムが地上に出たときに馬車が倒され、そのまま出ることができないでいるのだろう。
衛兵に伝えなければと視線を巡らせた少年だったが、よく見れば砂蟲と対峙していた衛兵たちは誰一人としてその場を離れておらず、場に留まってザナブルムへの警戒を続けてる。
これは少年の憶測だが、衛兵もまた、馬車に取り残されている人がいることに気づいているのだろう。今ならば何事もなく逃げられるだろうに戻ってこないということは、そういうことだ。だが、衛兵たちは警戒をするようにザナブルムを睨むのみで、それ以上動く様子はない。
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