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砂漠の色男4
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(……きっと、迂闊に手を出せないんだ)
ザナブルムは砂漠に住む魔獣の中でもかなり危険な生物である。それこそ、砂蟲の群れなどとは比べ物にならないほど厄介な相手だ。いくら食事に夢中とはいえ、ザナブルムの警戒範囲で動きを見せれば、尾の先端についている毒針で貫かれるかもしれない。そしてひとたびそうなれば、獰猛なザナブルムはその場にいる生き物を皆殺しにするまで怒りを収めないだろう。
まさに一触即発の雰囲気の中、少年は葛藤していた。今までの少年ならば、こんな場面に出くわせばすぐに逃げていただろう。彼は力のないただの人間だ。誰かを助けるなんて、できる筈がない。
だが、今は違う。いや、今も昔も少年自身は変わらないが、たったひとつ変わったことがあった。
少年の手が、控えめに首元のストールを撫でた。そうすれば、ストールの中からトカゲが這い出てきて、少年の肩に乗る。
逡巡するように視線を彷徨わせた少年は、しかし、思い切ってトカゲを見た。その視線を受け、聡明な炎獄蜥蜴《バルグジート》が小さな炎をぼっと吐き出す。
任せろと言わんばかりのその動作に、少年は一度ぎゅっと唇を結んだ後、頷いて走り出した。怖くないと言ったら嘘になるが、ここで自分が逃げ出すのはいけないことのような気がするのだ。
(だって、あの人だったら、絶対に逃げたりしない)
力がある者が力のない者の助けになるのは当然のことだ、と。きっと、あの王ならば、自分が王であろうとなかろうとそう言うだろう。だから、その王から力を貸して貰っている自分がそれをしないのは、間違いだと思ったのだ。
(ティアくんは飽くまでも僕の護衛だから、僕から離れられない。だから、僕がちゃんとあそこまで行かないと……!)
そう思って門の外へ向かった少年だったが、不意に誰かがその肩を掴んだ。びくりと大袈裟に肩を跳ねさせた少年が振り返る前に、彼はぐいっと後ろへと身体を引かれた。そしてその耳元に、小さな声が落ちてくる。
「こんなとこで炎獄蜥蜴なんか暴れさすなよ。大注目だぞ。そんなのお前も避けたいだろ?」
どこか呆れたような、しかし怒っている訳ではない声だ。そこでようやく少年が振り返ると、そこには、上半身の衣服をはだけさせ、褐色の肌を惜しげもなく晒している色男が立っていた。
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